『エゴフーガル:イスタンブールビエンナーレ東京』 _Egofugal: from 7th International Istanbul Biennal_ 東京オペラシティアートギャラリー, 新宿区西新宿3-20-2, tel.03-5353-0756. http://www.tokyooperacity-cf.or.jp/ . 2001/10/6-12/24 (月休), 12:00-20:00 (金土12:00-21:00) - Francis Alys, Maja Bajevic, Evgen Bavcar, Hussein Chalayan, Chris Cunningham, Omer Ali Kazuma, David Noonan & Simon Trevaks, 小谷 元彦, Philippe Parreno, Magnus Wallin, Apichatpong Weerasethakul, Jane & Louise Wilson. 今年で7回目という Istanbul, Turkey のビエンナーレ国際美術展に出展している 作家の中から抜粋した13作家からなる展覧会。ビエンナーレの出展作品ではなく、 別の作品の展示ということだが、これでもか、という感じの映像作品の展示だった。 映像作品が多い、というだけでなく、冒頭が Mangus Wallin の作品で、印象に 残った展示に Chris Cunningham のビデオクリップがあったので、どうも _Le Biennale di Venezia_ の Arseanle での企画展示と似たような印象だった。 Chris Cunningham の展示は Bjork, _All Is Full Of Love_ (1999) と Aphex Twin, _Come To Daddy_ (1997) のビデオクリップの上映。既に何回か観たことがある ものだったけど、大きな画面で観ると若干印象が違う。大画面のせいでビデオの 解像度の粗さも目立つというだけでなく、家でテレビやパソコンのモニタで漠然と 観ているの違い、細部まで注意が行く。_All Is Full Of Love_ は、ドキュメンタリー 映画で「機械にも情感が宿る」で言っていたことを巧く映像化している、程度に 思っていたのだけど。実は、絡む2台のロボットが女性同士というか自分同士という 設定だったということに気付かされたり。ホラー仕立ての _Come To Daddy_ は、 (おそらく郊外の) 近代的な高層集合住宅らしき所を舞台にしていたのに気付いて、 大友 克洋 『童夢』 が描いたような郊外団地の不気味さというテーマと重なる所も あるのかなぁ、と思ったり。さすがに、他の作品に比べて、ポップな商品として 通用するだけの完成度も感じさせるものがあった。 Magnus Wallin は身体障害者の感覚をCG化したというけれど僕にはいまいちピンと こないところも多いのだが。視覚障害者だという Evgen Bavcar の写真作品は、 白黒写真にライトが動いた跡があるというもので、ある意味で 佐藤 時啓 の作品 に似ている。視覚障害者の作品だと知らずに観ると、そのヴァリエーションに 過ぎないと思う。しかし、このライトの跡は、目の見えない作者が手にライトを 持って、手で探った跡の記録でもあるのだ。そんなことを知らないで観ても、 それなりに楽しめるけれども、そういうやって観ると、佐藤 の作品とはまた違った 面白さもある (佐藤 の作品が面白くないわけでない)。屋外で門などを撮影した 写真も面白いし、ヌードの写真もエロチックでユーモラスに感じるところもあった。 しかし、Wallin や Bavcar のような作家の作品があるところも、今年の Le Viennale Di Venezia のテーマ "Platea Dell'Umanita" と重なるなぁ、と思う。 日本の作家では、小谷 和彦 のインスタレーション。床と天井に鏡を貼った小部屋を 作り込み、四方の壁にテクスチャー感を強調するような抽象的な映像を投影する というもの。部屋に座って上を見上げたり下を見ていたりすると、宙を浮いている かのような感じになるのが面白かった。 プロジェクトのドキュメンタリー的な作品には、もやはほとんど共感できないし、 ほとんど映画というような長さの作品は展覧会に向いてないのでないか、 と思ったりしたけれども。それなりに興味深い作品が観れた展覧会だった。 2001/11/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕