Josef Nadj _Les Commentaires d'Habacuc_ 世田谷パブリックシアター (三軒茶屋), http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ . 2001/11/11, 15:00-16:30 - Choreographie: Josef Nadj. Music: Stevan Kovacs Tickmayer. - Istvan Bickei, Denes Debrei, Peter Gemza, Mathilde Lapostolle, Nasser Martin-Gousset, Ivan Mathis, Franck Micheletti, Josef Nadj, Cynthia Phung-Ngoc, Gyork Szakonyi. Yugoslavia 出身で France を拠点に活動する Josef Nadj 率いるカンパニー。 ダンスの文脈で語られることが多いが、その舞台はパントマイムの要素も強い。 去年観た _Woyzeck_ の、commedia dell'arte すら連想させられるようなドタバタな 感じの動きと、チェコアニメに通じる不条理さやシュールな舞台背景がとても 気に入ったので、この3度目の日本公演も観てきた。 そんな期待もあってか、ぐっとすっきりした舞台と比較的静的な動きに、ちょっと 外したかな、と思うところも。舞台に置かれた3つの机の周りで、いささか独立した 形で静かにダンスが進行するあたり、弘前劇場 のダンス版みたい、とか我ながら 意味不明な連想までしてしまったが。 しかし、途中、ちょっと壊れたタンゴのリズムに乗って、女性パフォーマー2人が、 男性パフォーマー1人の頭を細い木の籤のような物で檻のように囲むようなことを しはじめたあたりから、面白くなった。顔を檻に入れられた男は、他の男性 パフォーマー3人が下から支える階段を登ろうとするのだが、階段は横に波打つ ように揺れて登れない。階段が崩れ倒れてシーンが切り替わり、女性パフォーマー をコートの中に手だけ袖から出して見えないように抱えて巨漢のような姿になった 男性パフォーマー2が登場。最初はそのまま、途中から襟から女性も顔をだして、 二人羽織状態で暫らく踊ったりマイムしたり。その動きのユーモラスさも最高。 それが終わると、今度は、黒いスーツ姿の男性パフォーマーによるパペットダンス。 パペットの方も同じような格好で、取っ組み合いのケンカをしているかのような ダンスをみせた。さらに場面が切り替わって、今度は二つの背丈大の箱というか、 底を蓋が抜けた筒状のものそれぞれに男性パフォーマーが入っており、半ばそこ からはみ出したような感じのまま、他の男性パフォーマーがゆっくり転がすと いうもの。まるで、死体と棺桶を扱うようでありながら、それがユーモラスなのが 良かった。この一連の流れが場面の切り替えも含めてテンポ良くとても面白かった。 この最後の、背丈大の箱というか筒状のものは、様々な大きさのものが舞台上に 並べられ、様々な場面で、通路のように使われたり、中に人を入れて転がしたり (それも、椅子に座った人に被せてそのまま転がしたり)、もちろんその上に登ったり。 その使われ方も面白かった。 シュールでユーモラスな感じといえば、男女2組がロマンチックに踊るシーンでも、 背中に小形の白く四角いスピーカーを乗せてかがむように歩く男性がその背景で 独立して歩きまわっていて、音楽はそのスピーカーから流れていたり。そういう センスはとても気に入った。 と、印象に残るシーンがあってとても楽しめたのだけど、全体のストーリーは _Woyzeck_ 以上にわけがわからなかった。題名にある Habacuc というのは旧約聖書に 出てくる預言者の一人の名なのだが、その聖書のエピソードをよく知らないから だけかもしれないが。 2001/11/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕