ミニシアターのシネクイント (渋谷) が、『short 6』と題して短編映画のオムニバス 上映をしている。それぞれの作風はばらばらで全体の統一感に欠けるのは辛いが、 それぞれなかなか面白い作品だったので、個別にコメント。 まず、最も面白かったのが、これ。 『四つの部屋と六人の打楽器奏者のための音楽』 _Music For One Apartment And Six Drummers_ - 2001 / Sweden / 10min / color / 35mm. - Directed by Ola Simonsson and Johannes Stjarne Nilsson. Music by Ola Simonsson. - Sanna Persson, Johannes Bjork, Fredrik Myhr, Magnus Borjeson, Marcus Haraldson, Anders Vestergard. Sweden の2人組による実写の映画。老夫婦の住む郊外のモダンなアパートメントに 犬の散歩で外出した隙に侵入する比較的真面目そうな男性5人女性1人の6人組。 何を始めるかと思えば、部屋の中の様々な日用品をパーカッション的に使って、 淡々と、しかしノリ良く演奏をじはじめるのだ。最初は台所、寝室、ユニットバス、 そして最後に、居間。真面目な顔、几帳面なしかし絶妙な動作で、楽器ではない 日用品から、それもかなりノリの良い音楽を紡ぎ上げていく落差がとても面白い。 ストーリーが無くても楽しめる作品だと思うが。変に物語を作り込むこともなく、 しかし、居間での演奏を終えたところで、散歩に出ていた老夫婦が帰ってきて しまい、「しまった、見つかってしまった」という感じの、シリアスでなく軽く 笑えるようなオチを付けているのも、良かったと思う。ライヴで観たいような気も したけれども、真面目な顔や几帳面な動作というのは、映画で演出されているから 良いのであって、パフォーマンスで観ると面白みに欠ける、というところもある かもしれない。 ちなみに、この2人による前の作品 _Nowhere Man_ (1996) というのも、あちこちの 映画祭で賞を取っているそう。気になる作家だ。 次ぎに気に入ったのが、これ。 『鬘職人の日記』 _The Periwig-Maker_ - 1999 / Germany / 15min / color / 35mm - Directed by Steffen Schaeffler. Produced by Annette Schaeffler. - http://www.idealstandardfilm.de/periwig-maker.html 小説 Daniel Defoe, _A Journal Of The Plaque Year_ に基づく Germany の パペット・アニメーション。特に技術的に凄い技法と使っているわけでも、 パペットの造形が個性的でも、その動きが強烈でもない、という意味では画期的な 表現ではないが。むしろ、Czech のパペットアニメーションとも共通するとても 繊細な感じで、ペストに襲われたロンドンの街を描いていた。物語の選択も良く、 雰囲気で15分間持っていける作品だったと思う。 『WAVE TWISTERS』 _Wave Twisters_ - Directed by Syd Garon & Eric Henry. Art Direction & Character Illustration by Doug Cunningham. Based on a Story by DJ Q-Bert. - DJ Q-Bert, Yoga Frog, D-Styles, DJ Flare. - http://www.wavetwisters-themovie.com/ US西海岸の Hip Hop turntablist 集団 Invisibl Skratch Piklz の界隈による映画。 DJ Q-Bert, _Wave Twisters_ (Galactic Butt Hair, GBH0007-2, 1998, CD) の 映像化でもある。P-Funk や Lee Perry にも共通するショーもない black sci-fi と いうテイストをしっかり押さえた感じでなかなか楽しめた。ただ、45分という 上映時間はちょっと長いかもしれない。Hip Hop 文化として、MC、グラフィティ、 ブレークダンス、DJ を挙げていて、ビートボクシングが含まれていないのは、 スクラッチプレイに大きく傾倒している Invisible Scratch Pickles 界隈だからか。 残りの3本については、軽くコメント。 『メンバー』 _Member_ (2001, Directed by David Brooks) は、実写に基づくコンピュータ編集に凝った映像、だというのはわかるのだけど、 雰囲気ばかりかなぁ、という感じもした。ユーモアに欠けるし。 『カメラ』 _Camera_ (2000, Directed by David Cronenberg) は、ちょっとしたメタ映画という感じ。嫌いじゃないし、子供と老人の対比も良いと 思ったのだけど、どうも今一歩印象が薄かった。Cronenberg にしては淡白というか。 『キラー・ビーン 2』 _Killer Bean 2_ (2000, Directed by Jeffrey Lew) は、個人制作にしてはよく出来た CG アニメーションだと思うし、それなりに楽しめ たけれども。印象残るには、もう一癖欲しいかなぁ、という気もした。 2001/12/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕