2001年に観た展覧会・公演・映画など10選。 第一位: Cirque Baroque, _Triple Trap_, Theatre Le Chien Qui Fume, Avignon, France, 2001/7/8, サーカス. かつて Christian Taguet が演じていた演目の、長男 Jean-Baptiste による 再演とのことだが。空中ダンスシアターとでもいう舞台は、空中芸のそれぞれの 演技を有機的に組み上げ抽象的ながら不条理な物語に組みたてていく、素晴らしい ものだった。 第二位: L'Elephant Vert, _Faunemes_ in 『大道芸ワールドカップ in 静岡』, 2001/11/2, 野外劇. 衣装の中にスピーカーを仕込んで、効果音と喉に仕込んだコンタクトマイクに よるほとんど声にならない音だけをうまく使いながら、物語を巧く展開。衣装や音の Sci-Fi な雰囲気も良かったが。立振舞や立体的な音作りで、野外に劇的な空間を 作り込んでいく感じがとても良かった。 第三位: Christian Marclay, _Guitar Drag_, ギャラリー小柳, 2001/3/27-4/10, 美術展. ギターを引き摺りながらギターアンプの轟音を立てて走りまわるトラック、 というのが、シリアスと間抜けの紙一重のところ、という感じで、ビデオを 見ていて思わず笑い出してしまった。 第四位: 『四つの部屋と六人の打楽器奏者のための音楽』 (Ola Simonsson and Johannes Stjarne Nilsson (dir.), _Music For One Apartment And Six Drummers_, 2001), 映画. 最初は台所、寝室、ユニットバス、そして最後に、居間と、部屋の中の様々な 真面目な顔、几帳面なしかし絶妙な動作で、楽器ではない日用品をパーカッション 的に用いて、それもかなりノリの良い音楽を紡ぎ上げていく落差がとても面白い、 そんなパフォーマンスをミニマルなユーモアセンスで映画化したところも良かった。 第五位: 東京バレエ団, Jiri Kylian (choreo.), _Symphony In D_, 東京文化会館, 2001/11/17, バレエ. バレエとエアロビクスの身体制度の違いをユーモラスに作品にしたものだが、 2001年のワールドゲームズに先だって行われたエアロビクス競技のルール改正を 考えると、単なる制度の違い、ユーモアで済まされないものがある。 第六位: Luisa Lambri, ギャラリー小柳 + ライス・ギャラリー, 2001/10/12-11/10, 写真展. 逆光気味に建築物に差し込む光を捉えた幾何的なパターンを強調するような 建築写真は、物ではなく光の美しさを捉えるような感じがある。『イメージの首飾り ― 現代イタリア美術にみる家族、政治、信仰のかたち』展 (原美術館, 2001) に 出展されていた作品も、同様に美しかった。 第七位: Studio Azzurro, _Tamburi_, NTT ICCギャラリーA, 2001/4/20-6/10, 美術展. La Biennale di Venezia での、思わず羽に息を吹きかけたくなるような _The Cloud_ もそうなのだが。巧くアイデアを少なめに絞り、単純な操作体系に しているため、コンセプト抜きのレベルで十分に引き込まれるような感がある。 第八位: Josef Nadj, _Les Commentaires d'Habacuc_, 世田谷パブリックシアター, 2001/11/11, ダンス. パペットダンスもあったが。パペットだけでなく、舞台の上で大きな箱を転がして その箱に合わせて踊ったりと、舞台上の様々な物と踊っているような感がとても ユーモラスな舞台だった。 第九位: 『ポスター芸術の革命 ― ロシア・アヴァンギャルド展 ― ステンベルク兄弟を中心に』, 東京都庭園美術館, 2001/2/10-4/1, デザイン展. 1920s の Russian Avant-Garde の中でも最も洒落た映画ポスターを作っていた Stenberg Brothers のポスターの実物を Art Deco の洋館で堪能することができた。 第十位: Gerhard Richter, _Atlas_, 川村記念美術館, 2001/3/31-5/27, 美術展. 彼の写真の撮り方や描き方に、ECM 以降の音楽グラフィックデザインとの共通点と 親和性を感じた。Sonic Youth や Glenn Blanca のレコードジャケットに Richter の 作品が用いられているのだが、その理由の一つを見たように思った。 番外特選: La Biennale di Venezia, "Platea dell'Umanita", Venezia, Italy, 2001/6/10-11/4, 美術展. 確かに巨大化していたし、国別展示などは見本市と化していたところもあったが。 それでも、Arsenale のテーマに沿った展示は、ユーモラスなものもあったし、 見ごたえもあった。それだけに、その後に観た『横浜トリエンナーレ2001』は、 それとの落差にがっくりきたものだった。 2002/1/1 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕