『Jam: 東京 ― ロンドン』 _JAM: Tokyo - London_ 東京オペラシティアートギャラリー, 新宿区西新宿3-20-2, tel.03-5353-0756. http://www.operacity.jp/ . 2002/2/8-5/6 (月休), 12:00-20:00 (金土12:00-21:00). 美術というより、ポピュラー音楽、デザイン、イラスト、ファッションといった ポピュラー文化というかサブカルチャー的な要素の大きい日本と UK の作家の作品を 集めた展覧会。多くの作家を詰め込んでいることもありかなり雑然とした印象を 受ける展示だ。こういう雑然とした感じも、この手の表現では重要なのはわかるの だけれど。それなら、別に展覧会でやらなくても、普段の日常生活で体験できる じゃないか、と思ってしまった。ポピュラー文化に関する展覧会を観るときに よく思うのだが、展覧会としてやるなら、反動的権威的と言われようとも、 体系付けて観せた方が良いのではないか、と思ってしまった。 最も展示の中で興味を惹いたのは、吉永 マサユキ の暴走族の写真シリーズ。 街中での実際に走っている様子の写真や集合写真よりも、スタジオの真っ白の 背景で特攻服姿の人物と改造バイクを並べて撮った写真シリーズが面白かった。 ドキュメンタリー的、というより、スタジオ撮影によって社会的文脈から切り出す ことによって、特攻服や改造バイクが「絵」になっているという感じで面白かった。 この形式が、社会学的な記録写真以上のものにしていたと思う。単に、特攻服や 改造バイクなど、漠然としたイメージしか持っていなかったので、大判の写真で、 こうなっていたのか、と新鮮に観ることができた、ということもあるが。 似た傾向のものとしては、都築 響一 のラブホテルの内装デザインの写真シリーズ も興味深かった。ラブホテルの内装なんて、こんな展示でもなければ、何十もの デザインを見比べることなどできないこともある。ただ、プレゼンテーションの 形式が、吉永 マサユキ のものにくらべ雑然としていて弱いかな、と思った。 ポピュラー文化的な要素を取りいれた現代美術の文脈の作品の展示もあったけれど、 つまらなかった。かつて、_Real/Life - New British Art_ 展 (1998-9) を観た ときも、Georgina Starr や Gillian Wearing ポップな要素を持つ現代美術が 多かったのだが。そのときのポップな要素というのは、意識的に共有している 社会的事実の問題という感じだった。しかし、この展覧会では、このような表現に 日常的に接しているので、それを自然なものとして表現してしまった、という感じ なのだ。現代美術展ではなく、ポピュラー文化の表現を中心に扱った展覧会なので、 こんなものなのかもしれないが。 しかし、去年、London, UK でこの展覧会を開催したときは好評だった、という 噂も聴く。しかし、実際に展示を観て、それは、単に UK での日本のポピュラー 文化 (サブカルチャー) に接する機会がほとんど無いからではないか、と邪推して しまいたくなるところがあった。日本なら、UK のサブカルチャーは流行という形で 常にある程度流入している。少なくとも僕にとっては、新鮮さよりも既視感の方が 強かった。そんな展覧会だった。 2002/04/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕