『映像体験ミュージアム――イマジネーションの未来へ』 東京都写真美術館, 目黒区三田1-13-3 (恵比寿), tel.03-3280-0099, http://www.tokyo-photo-museum.or.jp/ . 2002/03/01-2002/05/19 (月休), 10:00-18:00 (木金10:00-20:00). - 横尾 忠則, 久里 洋二, 古川 タク, 福田 美蘭, 河口 洋一郎, 岩井 俊雄, 八谷 和彦, 中ザワ ヒデキ, minim++ (近森 基 + 久納 鏡子), IKIF (石田木船映像工場), 寺門 孝之, 伊藤 有壱, IDEAL COPY, 三橋 純, 森脇 裕之, クワクボリョウタ, 小田 英之, モンキー・パンチ, 藤本 由紀夫, 永原 康史, 中川 正博 (20471120.inc), 橋本 典久, etc カメラ・オブスクラや影絵などの映像に関する歴史的な資料から、現代の作家に よる作品までを展示した展覧会。この2者の関係がいまいち有機的に絡んでいな かったように思うし、この展示で映像史が概覧できるか、という点については、 よくわからない。けれども、個々の現代の作家の作品については、それなりに 遊び心があって楽しめる作品もあった。気になった作品についてのみコメント。 八谷 和彦 の「Centrifuge」 (2001) は、息を吹きかけてファンを回すとそれに 合わせて自分の周囲の風景を回転させて見せよう、という作品だ。しかし、 映像の投影先がファンを吹いているときの視線の先でないし、それほど視角の 主要な範囲を占めていないこともあり、感覚に直接的に訴えかける、というより、 そういうことを表現したいんだろうなぁ、と思わせる程度だった。うまくいけば 面白くなりそうだとは思うけれど、現状ではワンクッションあってダメだった。 「視聴覚交換マシン」 (1993-1996) では、身体感覚と視覚のズレを直接訴え かけるような強さがあったし、それに他者との関係も加わって面白かったのだが。 やはり、それを越えるのは難しいかな、と思ってしまった。 直接的、といえば、森脇 裕之 『レイヨーグラフィー』 (1990) は、自分の影を 赤く光らせる壁面、とでもいうもの。単に、光センサーと発光ダイオードの組を アレイ状に配置して、影になった所だけダイオードを発光させているだけなの だけれど。単純でいて、アレっと思わせる面白さがある。しばらく、その壁面の 前で人影遊びをしたくなるくらいだ。こういう作品は、下手な批評性とか意味 合いを持たせずに、こうミニマムな方が良いように思う。 minim++ (近森 基 + 久納 鏡子) の 『Tool's Life 〜 道具の隠れた正体』 (2001) もカップなどの金属性のミニチュアに触れると、その影から手足が伸びたりする というもの。触って出てくる反応の良さというか直接的な感じは好きなのだけれど。 物や影の形の意味というのがどうもひっかかってしまうような気もする。他愛の ない感じで悪く無いとは思うのだけど。 と、比較的インタラクティヴな作品の方が楽しめたのだけれど。静的に観賞する 作品としては、橋本 典久 の球体パノラマ写真やゼログラフという円形にパノラマ を展開した写真作品。特に、「ショベルカーの下」 (2001) などは造形的に面白く 見えたのだが。他の地平線の見える風景で人物が一人、というのは、被写体と しては意外性に欠けて面白くないなぁ、と思ってしまった。 2002/05/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕