デイヴィッド・ロッジ 『考える…』 (白水社, ISBN4-560-0472403, 2001) - 高儀 進=訳; David Lodge, _Thinks..._, 2001. コミック・ノヴェルを得意とする英国の小説家の去年出た新作だか、 面白かったので、軽くコメント。 去年の 海外小説復刻フェア で復刊された同じ作家による 『小さな世界 ―― アカデミック・ロマンス』 (白水社, ISBN4-560-04738-3, 1986/2001; David Lodge, Small World - Academic Romance, 1984) も大学を 舞台にしたコミック・ノヴェル。それを読み返したばかりだったこともあり、 「あー、続編みたい」と思ってしまった。実際、共通する登場人物が1人 出てくるのだが。 しかし、比較して、登場人物が大人な感じだという印象を受けたのは、 死に関する記述が印象に残ったからかもしれない。最後にそれなりに主要な 登場人物の一人が死んだのが、ちょっと驚いてしまった。今までのロッジの 作品には、こういうことは無かったように感じた。 様々な作家の文体模写やボイスレコーダー起こしの文、日記や電子メールの やりとりの文体など、文体でかなり遊んでいる。しかし、小説のテーマでもある 意識に関する考察として、単なる文体遊びではなく、その文体を使う説得力が 出ていたのも良かった。逆に見ると、意識に関する考察というテーマも、 認知科学者と小説家の恋愛にまつわるドタバタという物語的なユーモアと、 文体遊びという形式的なユーモアをもって描かれているのも良かった。 2002/06/06 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕