『ニュー・メディア ニュー・フェース 02』 NTT ICC ギャラリーB, http://www.ntticc.or.jp/, 西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4階, tel.0120-144199. 2002/04/26-06/16 (月休), 10:00-18:00. - 井上 尚子, 杉原 有紀, タムラサトル, 古池 大介. 以前からそれなりに追いかけていた作家が出展している展覧会なので、期待して いたところもあったのだが。体感に直接訴えかけられるような作品の存在感が 良かったと思っていただけに、存在感が殺がれた感の展示がかなり拍子抜けの 展示だった。ちょっと残念。 入ってすぐに展示されていた タムラ サトル の『Standing Bears Go Back』(1998) は、プロペラの推力でレールの上を走る巨大なクマの模型の、プロペラの立てる 轟音や移動するクマの模型の迫力が最高の作品だったのだが。僕の行ったタイミング が悪かったのか、僕が会場にいる間、動くことは無かった。『バタバタ音をたてる 2枚の布』 (2000) にしても、観客の安全も考えてか、たいして近づけないように なっており、遠目で眺めるという感じになっていた。回転する物体に煽られるような 感じとはほど遠いものになっていた。『プラスチックモデルは粉々にくだける』 (2000) のようなビデオ作品もあるし、それも面白いと思っているが、彼の作品の 面白さは、単にナンセンスなユーモアだけでなく、グォーッという騒音やブゥーンと 煽られるような感じとか、その絶対的な体感だと思うだけに、こんな体感するに 程遠い展示でいいのかなぁ、と思ってしまった。 それは、井上 尚子 の展示にも言えることで、『Marble Project vol.2: Marble Lovers - on home ground』 (川口現代美術スタジオ, 2000) での、床に敷き詰めた マーブルチョコレートの放つ匂いと、それを踏み付けるときの触感が凄かったと 思っている。それだけに、今回のビデオインスタレーションは、むしろ観念的に なり過ぎ、という感を受けてしまった。 杉原 有紀 『かぶり型水ディスプレイ』 (1998-2002) は、スパイラルホールでの 展示よりミニマルな感じは良かったけれど、暗いギャラリーではミニマルさは生き ないのかなぁ、とも。それに、『水のドーム』に比べてこぢんまりして、水の膜の 中にいる気分にあまりならないのもちょっと惜しかったかもしれない。 古池 大介 の展示もビデオインスタレーションも、そんな流れで観たせいか、 コンセプチャルに感じてしまった。 ICC というハコの制約もあるのかもしれないが、感覚に直接訴えかけるような強さを 生かす展示というのは難しいんだなぁ、とも思った展覧会だった。 2002/06/08 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕