ダグ・エイケン 『ニュー・オーシャン』 Doug Aitken, _New Ocean_ 東京オペラシティアートギャラリー, 新宿区西新宿3-20-2, tel.03-5353-0756. http://www.operacity.jp/ag/ . 2002/8/31-11/17 (月休), 12:00-20:00 (金土12:00-21:00) ビデオ・インスタレーション作品で知られるUS出身の作家 Doug Aitken の個展は、 ビデオの投影方法よりも、さすがMTV出身と思うようなスタイリッシュな映像は もちろん、投影方法も印象的な展覧会だった。 入ってすぐのちょと開いた3面の平面スクリーンに投影された作品 _Thaw_ の アラスカの氷河での遠景の映像とクロースアップの映像を使った映像にしても、 むしろ特定の場を想定させないような映像と、氷が割れたり水が流れる音から、 抽象的な氷と水の世界を演出するようなカッコ良さがあった。最後の360度の パノラマスクリーンを使った _New Ocean Cycle_ のような作品でも、瀑布や 外洋の遠景映像などから、具体的な場を感じさせない水の世界を演出していたし、 上下反対の映像を投影されたときの、ぐっと抽象性を増すような感じも良かった。 しかし、写真の分野では、ある意味でこのような撮り方は一般的のようにも思う。 例えば、畠山 直哉 や 杉本 博司 の写真と共通するようなスタイリッシュさ もそうだし、Gerhard Richter, _Atlas_ での写真もそういう点で印象的だった。 もちろん、パノラマに動画で投影することによって、かなり雰囲気が違うものに なっているのも確かなのだが。 そういう点で、MTV出身だなぁ、と思わせてくれたのは、人物が登場する _New Ocean Floor_ や _New Ocean New Machine_ のような作品だ。人物が登場 すると、どうしても物語性とか場の特定性とかが強くなりがちだと思うだけに。 いずれも少し傾けられた十字状のスクリーンに投影させられた作品なのだが。 4つの羽状のスクリーンに投影される映像はほぼ同じであり、人物の動きが、 左右に動いているというより、中から外へ、もしくは、外から中へという感じと なっていた。投影されている映像も具体的な場を特定しずらいような感じだった ように思うけれども、それよりも、その投影方法が場の特定性というか現実性を 剥ぎ取っているような感じがしたのが、面白かった。 そんな感じで、何か新しい凄いものを観てしまったという感じではなく、 ちょっとカッコイイなと思うような展覧会だった。 ダムタイプ 『ヴォヤージュ』 Dumb Type, _Voyages_ NTT ICC ギャラリーA, http://www.ntticc.or.jp/, 西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4階, tel.0120-144199. 2002/08/23-10/27 (月休), 10:00-18:00. 同タイトルの舞台作品の上演に合わせての展覧会だ。前の舞台作 _memorandum_ (2000) がいまいちに感じたこともあり、舞台作の方は観に行っていない。 従って、展示の方のみについてコメント。 こちらもある意味でスタイリッシュな作品といえばそうなのだが、いまいち 楽しめなかった。壁も黒く塗った暗い部屋の床中央に抽象的に加工された映像を 投影し、胸くらいの高さのところに水平に回転する赤色レーザーで線を描く というインスタレーションだったのだが。コンセプト的には意義があるのかも しれないけど、正直に言って床に投影された映像などどうでもいいという感じだ。 むしろ、赤色レーザーの光が人を切って、輪切りのような赤い輪がギャラリー内に 浮かび上がる方が面白かった。赤色レーザーの光が横切っている高さに指を 持っていって、光の面を引っかいて遊んだりした方が面白いと思うし、むしろ その方向で作品を展開していった方が良かったんじゃないかと思う。例えば、 ギャラリー中を光の面を引っかいてあるいている人が沢山いたら、ユーモラス なのに、と思ったりもした。しかし、どうも、作品に、その手のユーモアが 欠けてしまっているようにも感じた。ちなみに、赤色レーザーの面は実は ギャラリー外まで広がっている。しかし、ギャラリー外は明るいため、それほど 切られた線が目立っていなかった。これがもう少し目立てば面白いのだろうけど。 同時開催の 池田 亮司 『db』 は、真っ暗な無響室で 池田 亮司 の音を聴くって 感じの企画。体感できる低音など悪くは無いのだけど、別に無響室で聴かなく ても、と思うようなところもあった。目くらましを体感させるようなラウンジを 使ったインスタレーションにしても、ある意味で感覚に直接訴えかけるような 強さを狙ったところはあるんだと思うんだけれど、例えば、James Turrell の 光のインスタレーションや、Anish Kapoor の顔料を塗った穴の作品に感じた ような面白さがいまいち感じられなかった。単に、感覚に直接訴えかければいい というわけでもないのだなぁ、と痛感してしまった。 このままであと10年続けたら職人芸的な面白さが出てくるかもしれないけれども、 今は旬が過ぎたのかなぁ、と感じてしまった、そんな展覧会だった。 あと、同時開催として、過去の舞台作品のドキュメンタリー・ビデオ上映会も 開催されている。以前に _pH_ (1992) のドキュメンタリー・ビデオを観たことが あるのだけれど、それはビデオで観て凄いってほどでも無なかったので、 まだ観ていない。 2002/09/08 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕