オムニバス公演『トウキョウ フィジカルシアター コレクション』の中から、 最も面白かった舞台を紹介したい。 水と油 『机上の空論』 北とぴあつつじホール (王子), 15:50-16:30 - 作・演出、衣装: 水と油 - じゅんじゅん (高橋 淳), ももこん (藤田 桃子), おのでらん (小野寺 修二), すがぽん (須賀 令奈). 水と油 は、マイムを背景に持つ4人組だ。今回の公演で初めて観たのだけれど、 予想以上に楽しめた。ちなみに、この演目は初演だったようだ。 マイムやアクロバットを思わせる動きも楽しかったけれど、舞台中央の静的に 置かれた大机を巧く使い、パフォーマーの動作によって動的な空間の文節と融合を 表現していたのが、とても面白かった。例えば、大机の上が机の上の空間では 地面として、机の上手の空間では実際の机の上として使われ、独立した空間を 成して別の物語が進行しているのだが、鞄やコーヒーカップのような小道具、 時にはパフォーマーの移動によって、空間が繋ったり切れたりする、といった 感じになるところが面白かった。その効果も、時に不条理に、時にシュールに、 時にユーモラスにと、ニュアンスが多彩だった。机の下や下手の空間を、 パフォーマーの動きを使って、上下反転した空間として利用したり。この大机の 回りの空間の使い方のアイデアだけでも、この舞台は成功だったように思う。 もちろん、アイデアが良かっただけでなく、動きにも実感させるような強さが あったように思う。比較的静的でニュアンスの豊かなマイム的な動きだけでなく、 軽業的な動きや速い動きも、大机を使って高さも感じさせて、ダイナミックだ。 時空間にメリハリを感じて良かったように思う。もちろん、道化的な動きも 充分に利用して笑いを取っていたように思う。それも僕は気に入った。 これに近い表現というと、去年 Avignon で観た Les Acrostiches の "cirque theater" とか、日本に度々来ている Les Cousins の舞台とかの、サーカスに 近い文脈での表現を僕はまず連想する。それは、それぞれの技を有機的に繋げる ために物語を使っているという感もあるが。水と油 は、より物語ることを重視 したパフォーマンスで、やはりマイム的というか、サーカスとは違うなぁ、と 思うところも多かった。 しかし、こういう表現は、日本よりヨーロッパの方がウケると、いうか客層が 広そうだと思った。実際、Avignon Off や Edinburgh Fringe での公演も好評 だったよう。欧州ツアーもしているようだ。 2002/09/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕