吉岡 徳仁 『Honey-pop 椅子:平面から立体への挑戦』 MDS|G, 渋谷区大山町36-18 (代々木上原/東北沢), tel.03-3481-6711. 2002/10/8-11/2 (日月祝休), 13:00-19:00. 展覧会場や店舗のデザインなど、三宅 一生 / Issey Miyake との仕事が多い 吉岡 徳仁 の椅子の展覧会。 ハニカム構造になるように接着されて1cm厚に積層された薄紙を広げ、人の 座った時の重みで型を付けて作った椅子 Honey-pop の展覧会。素材の使い方が とても面白いのだけど、開いて型付けてしまうと再び畳めない、というのは 惜しいかもしれない。ちなみに、76,000円と手の届くような価格で売られて いたが、美術作品として購入、という条件がついていた。もっと普通の実用的な 椅子として売ってもいいのではないか、とも思う。ちなみに、この椅子は、 MoMA, NY、Centre George Pompidou、Vitra Museum に蒐集されているという。 また、Honey-pop の形を生かしてポリエチレンで成型して作った Tokyo-pop という椅子も展示されていた。座り心地は悪くないけれども、Honey-pop の ような素材の面白さは無いように思う。 展示方法だが、積層した紙を、裁断して、広げて、型を付けて、椅子にする、 という工程がわかるようになっているのも面白い。しかし、実際には座れないのは、 少々残念かもしれない。(ポリエチレン製の Tokyo-Pop は座ることができる。) 展示だけでなく作品の感じも、A-POC のジャージ素材のロールから服まで、 という雰囲気に近かったように思う。紙素材の椅子が、坂 茂 による紙の家 (会場の MDS|G) に展示されている、というのもシャレている。 しかし、最も面白かったのは、Tokyo-Pop の素材のポリエチレンのペレットが 床に厚く敷き詰められていたこと。静電気を起こし易いため、踏みしめて歩る いていると、帯電してバチバチになるのだが。そんな場所が、綺麗な白い砂場と いう感じになっているためだろうか、女の子たち (おそらく近所の、それも 小学校低学年くらいだろうか) たちの遊び場になっていたのだ。僕がギャラリー に行ったときは、既に3人くらいの女の子が遊んでいたのだが。ギャラリーを出て 自転車に乗る準備をしている間に、通りがかった女の子が、一緒に歩いていた 母親に入ってみてよいかと尋ねて、中に入っていくのを目撃もした。快く遊ばせて やっているギャラリーのスタッフの対応も良いと思った。といっても、空間的には ミニマルで特に何かがあるというわけではない。しかし、楽しそうな空間にする、 ということは、いかにも遊び場的な仕掛けを作ってやる、ということではない のだなぁ、ということを、この光景を見てつくづく実感した。そして、それが この展覧会を観ていて一番面白かったことだった。 2002/10/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕