『QUOBO ベルリンのアート ― 壁崩壊から10年』 _QUOBO: Kunst in Berlin 1989-1999_ 東京都現代美術館, 江東区三好4-1-1, tel.03-5345-4111, http://www.mot-art-museum.jp/ . 2002/09/21-11/24 (9/23,10/14,11/4開;9/24,10/15,11/5閉), 10:00-18:00 (金-20:00). - Fritz Balthaus, Annette Begerow, Monica Bonvicini, Maria Eichhorn, Nina Fischer / Maroan el Sani, Adib Fricke, Ulrike Grossarth, Inges Idee, Laura Kikauka, Karsten Konrad, Carsten Nicolai, Albrecht Schaefer, Eran Schaerf, Twin Gabriel (Else Gabriel & Ulf Wrede). 東京都現代美術館の地下ギャラリー1フロアだけを使った展覧会。ちょっと地味かな とも思ったけれども、量的には、一度に観るに丁度いいくらいかもしれない。 最も目を引いたのは Monica Bonvicini, _Plastered_ (1998)。石膏ボードと発泡 スチロール・ボードを、床いっぱいに敷き詰めた作品なのだが、最初から意図して そうしたのか会期中にそうなったのか判らないが、ぼろぼろ。写真で観たことがある 1993年の La Biennale di Venezia での Hans Haacke のインスタレーション _Germania_ での打ち砕かれた床面のことを、ちょっと思い出したり。コンセプト では、用いられている建材は男性の領域の象徴みたいだし、意識しているのかなぁ、 と思ったり。ま、踏み砕くかのように、踏みしめてたり飛び跳ねたりして歩くのは、 単純に面白い。 Albrecht Schaefer, _Florina_ (1998) は、子供用のブラスチックのジョイントの 玩具を発泡スチロールで拡大して作り、それでギャラリーの通路を埋めるかのような 構造を作るというもの。一応ギャラリー内の通路のようなところに設置されていたが、 ギャラリーのように展示を目的とした空間ではない所に設置されていた方が面白い のではないか、と思った。例えば、エントランスホールの一角とか、地下フロアに 降りるエスカレーターの周囲の空間とか。 Carsten Nicolai の _noto Kit infinity_ (1997-8) は、4台のレコード・ターン テーブル (Technics SL1200) を並べて、客に針の上げ下ろしをさせて、勝手に ミックスをさせる作品。載っているレコードは。円形の溝が5mm間隔で並んでいる もので、いろいろな音が無限ループで再生できるようになっていた。それ自体は それほど面白いとは思わなかったけれども、中年の女性がこの作品の前で途方に 暮れていたのを見かけたのが面白かった。(面白がって観ていて、使い方を教えない というのも、意地悪いかなぁと思ったけど。) というのも、そもその針の下ろし 方が判らないのだ。もちろん、ピッチを調整したり、スクラッチすることも、 彼女は想像もつかなかっただろう。結局無音のヘッドホンを耳に当てただけで 去って行った。この作品が暗黙の前提としているリテラシーを暴いてくれたような 感じも面白かったし。そういう観賞というか誤読が、作者の意図しない作品の解釈を 生んでくれそうな気もして、ちょっと面白かった。 こういう前提事項といえば、Maria Eichhorn, _Game On The Sloping Billiard Table_ (1989)。微妙に傾いたビリヤード台と球、キューなど一式が置かれていて、実際に プレーすることによって傾きを感じよう、とでもいう作品なのだが。そもそも、 そんな微妙な傾きが実感できるほど、球をコントロールしたプレイなんて出来ない、 と、いうことを実感してしまった。 コンセプトを図解するような作品とか、心象風景の箱庭みたいな作品も、もちろん あったけれども、それらは、どうでもいいや、という感じ。こういうのは日本だけ じゃないんだよなぁ、とか思いはしたけれど。 2002/11/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕