『エモーショナル・サイト』 _Emotional Site_ 食糧ビルディング, 江東区佐賀1-8-13 (門前仲町,水天宮前) 2002/11/16-24, 12:00-18:00 - 森村 泰昌, 杉本 博司, 戸谷 成雄, Gillian Wearing, Thomas Ruff, Navin Rawanchaikul, 小林 正人, 宮本 隆司, Jeanne Dunning, 法貴 信也, Sislej Xhafa, 村上 隆, Candice Breitz, 落合 多武, 森 万里子, Jan Fabre, 杉戸 洋, 小粥 丈晴 & 雄川 愛, 奥村 雄樹, 佐藤 勲, 桑原 正彦, 三宅 信太郎, 奈良 美智, 牧谷 光恵, Paul McCarthy, 松江 泰治, Thomas Ruff, 安田 千絵, Hellen van Meene, 中村 哲也, 野口 里佳, 尹 煕倉, Are You Meaning Company, Dan Asher, 廣瀬 智央, 渡部 裕二, 須田 悦弘. 佐賀町エキジビット・スペースや小山登美夫ギャラリーなど、現代美術の拠点と して知られた、食糧ビルディング (1927年竣工) の取り壊しが決まった。 取り壊しを前にして、企画された美術展が、この『エモーショナル・サイト』だ。 確かに、今まで食糧ビルに行っても見ることができなかった部屋を見ることが できた、という点では面白かった。普段入ることの無かった部屋は、今からみると、 オフィスというには部屋が小さく、むしろ住居のように感じた。また、以前は駐車 だらけで暗く狭く感じていた中庭が、何も無くなったことで、とても明るく広く なっていたのも印象的。ごちゃごちゃしたものが取り払われて、多用されたアーチ 構造なども際立ち、ぐっときれいに見えたように思う。 しかし、あまりに食糧ビルに負っていて、展覧会としては面白いとは思わなかった。 それは、今まで見過ごされていたものに光を当てる、違う評価を与える、という 企画ではなかった、ということが大きかったように思う。今まで約20年間ここで 頑張ってきた、という主催側の自負も理解できないわけではないが。ここに展示 したというアリバイ作り、伝説作りばかりに展覧会の主眼があるように感じて、 特に深く関係するところの無い僕にとっては、ヒくところも多かった。 空間的にこの建物を巧く使ったというインスタレーションと言えたのは、森村 泰昌 の地下のインスタレーションだけだったろうか。青い光だけの暗い地下に入ると、 あちこちの部屋で、中が明るくなり「パン」という音が聞こえてくる、というもの。 暗い部屋を覗くと、手を叩く様子が捉えられた映像がビデオで間欠的に流されて いることがわかる。一部屋だけ照明が付いており、そこを覗くと、手を合わせた 彫刻が置かれている、というオチもある。もう少し客が少なくて、手を叩く音と 光を追い掛ける状況になればもっと面白かったかな、と思ったが。というのも、 客は皆、ビデオモニタの前で映像を待ち構えるようになってしまっていたからだ。 展覧会の企画とは別に、印象に残ったのは、写真作品。Thomas Ruff の客観性を 強調するような写真も好きだけど、宮本 隆司 の食糧ビルディングを撮った 写真作品は、10年以上前に中野刑務所の写真を見たときに感じたのと同じような 微妙に情緒的な感じ (うまく言葉にならないのだけど) をふと思い出して、それが とても気になった。あと、松江 泰治 の、焦点深度をとても深く取って、明るく のっぺり抽象的な模様となったような白黒写真が、観るのも久々だけれども、 やっぱりカッコ良いなぁ、と思った。 2002/11/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕