『涎と永遠についての概論』 _Traite de Bave et d'Eternite_ - France, 1951, B+W, 120min. - Directed by Isidore Isou. USのロック評論家 Greil Marcus が、Dada と punk の間を埋めるものとして _Lipstick Traces_ (Harvard Univ. Pr., 1989) で挙げていたのが、1950〜60 年代の France の芸術運動、Isidore Isou の Lettrism International (LI) と、 LIから派生した Guy Debord の Situationist International (SI) だ。 Isou については、_Lipstick Traces_ で、記述にかなりを割かれている。 そんな Isou のマニフェスト的な映画が、この『涎と永遠についての概論』だ。 そんなこともあって、かなり期待して観に行ったのだけれども、正直に言えば 2時間というのは長かったように思う。もともと4時間半もあったというから、 これでもコンパクトに纏めたのかもしれないが。映像と付かず離れずといった 感じのナレーションが延々と続くのだけれども、フランス語が聞き取れない こともあり、字幕を追うだけで疲れてしまった。 この映画の中で繰り返し指摘される、ナレーションやセリフなどの言葉が映像に 従属している、ということについては、この映画が初めて本格的に指摘したの かもしれない。しかし、サウンドと映像の関係に自覚的で、違いに異化する 手法を洗練した形で駆使した映画 (例えば、Jean-Luc Godard や Jacques Tati の映画) が出てきている後では、やはり歴史的な価値しか無いかなぁ、と思う ところもある。映像と文章を切り離す手法は目新しいかったかもしれないが、 そういう手法を使う必然性がテーマからあまり感じられなかったせいかも しれない。むしろ、散々ナレーションされる作家意図が、言い訳臭く感じられて しまった。 といっても、Lettrism の詩 (Dada の音声詩のようなものだ) の朗読の断片が サウンドトラックのように使われたり、ハンドスクラッチの抽象的な画面に Lettrism の詩の朗読が合わせられたりしたところは、カッコ良いと思ったが。 恋愛話や Lettrism のコンセプトに関する話は控えめに、もっとそういう所を 生かした映画にすれば、今観ても楽しめた映画になったのではないか、と、思って しまった。 ちなみに、この映画は以下の展覧会・映画上映会の中で上映されたものである。 『モーリス・ルメートルとレトリスム ― 映画/絵画50年の軌跡』 _Maurice Lemaitre et le Lettrisme_ 東京日仏学院, 新宿区市ヶ谷船河原町15, tel.03-5261-3933, http://www.ifjtokyo.or.jp/ . 絵画展: 2002/12/5-27, (9:30-20:00;月12:00-20:00;土9:30-19:00;日12:00-18:00). 映画上映: 12/1,5,8,13,14,15. メインは、LI の中心的なメンバーだった。Maurice Lemaitre の展覧会だ。 Lemaitre の映画も5本上映されているが、そちらは観ていない。絵画の方は、 タイポグラフィーやコラージュを駆使したポスターが溢れている現在、 残念ながらそれほど強烈な印象を残すものではなかった。 2002/12/08 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕