2002年に観た展覧会・ダンス演劇等の公演・映画など10選。 第一位: Nederlands Dans Theater I II III Gala, 彩の国さいたま芸術劇場, 2002/10/05, ダンス. 劇場の大奈落や機械室などの場所を使ったインスタレーション & パフォーマンス _Backstage Tour_ (2000/2002) はもちろん、自分も舞台に上がりダンサーたちと 一緒に踊った _Minus 16_ (1999) で、ダンサーは表現の素材ではなく人間だという ことを実感するという、とても良い観賞体験ができた公演だった。 第二位: Les Vernisseurs, _Joyeuse Pagaille Urbaine_ in 『大道芸ワールドカップ in 静岡 2002』, 2002/11/2, 野外パフォーマンス. 隊列を組んで登場し、コンプレッサーで紙テープを周囲に舞い上げ客に向かって 吹き付け、客だけでなく街中を美しい混乱に落し入れてくれた。 第三位: 金沢 健一 『はがねの変相 ― 金沢健一の仕事』, 川崎市岡本太郎美術館, 2002/2/27-4/7, 美術展. 工業用鉄板を使った立体作品「振動態」シリーズの形状は単純で白い大理石の 細かい粉が描く模様はある程度予想が付いてしまうものであるが、体感するような 強烈な音や、細かく跳ね上がる粉の質感など、頭で理解することと体感することの 違いをはっと気付かさせてくれるだけものがあった。 第四位: 水と油 『机上の空論』, 北とぴあつつじホール, 2002/9/22, フィジカル・シアター. マイムやアクロバットを思わせる動きは、舞台中央の静的に置かれた大机の回りの 空間の動的な分節、転倒、融合を実感する強度を感じた。 第五位: Robert Lepage (dir.), _The Far Side Of The Moon_, 2002/10/19, 演劇. ミニマルながらトリッキーな舞台装置・映像使いをすることによって、見立ての 妙を楽しめる、イメージをかきたてられるような舞台だった。おかげで、冷戦という マクロポリティクスと兄弟の不和というミクロポリティクスの組み替えも自然に 感じるくらいだった。 第六位: Diversions, パークタワーホール, 2002/11/23, ダンス. とても西洋的な顔出ちと体型と日本の中学高校の制服 (とその着崩し) を元にした 衣装という組み合わせに少女マンガを連想させられる、というだけでなく、 文化的背景を共有しているとは思えないヨーロッパのダンサーに踊らせられる程に 抽象化されている、その絶妙のバランスが面白かった。 第七位: 川俣 正 『デイリーニュース』, 水戸芸術館現代美術ギャラリー, 2001/11/3-2002/1/14, 美術展. 約150トンもの新聞紙の山は、否定的に感じた他の過去のプロジェクトに関する展示も おまけとして気にならない程に、圧倒的だった。 第八位: 『カバレット・チッタ』, クラブ・チッタ, 2002/07/10, パフォーマンス・ショー. 大道芸などでコミック・ジャグラーとして活躍してきた ダメじゃん小出 の隔月ソロ 公演シリーズ『負け犬の遠吠え』 (Plan B) に彼のの話芸人としての可能性を感じた けれど。彼も出演した音楽やパフォーマンスからなるこのヴァラエティー・ショーに、 サーカス・大道芸やキャバレーなどの流れを汲む身体表現の、新たな活動の場の 可能性を見たように思う。 第九位: Matthew Barney (dir.), _Cremaster 3_, 2002, 映画. 明確なストーリーも技法への批評性もないけれども、ドロドロ感やグチャグチャ感の ような質感への拘りを感じる、ナンセンスというよりは意味深長という意味で シュールな、大人向けのファンタジー映画として楽しめた。 第十位: 不景気という経済状況を反映してかかなり低調に感じた2002年だったので、 十件選びたいと感じるものは無かった。 2003/01/01 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕