ダニエル・リベスキンド 『存在の6つの階段のための4つのユートピア』 Daniel Libeskind, _Four Utopias for Each of the Six Stages of Existence_ NTT ICC , http://www.ntticc.or.jp/, 西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4階, tel.0120-144199. 2002/12/20-2003/2/23 (月休;12/28-1/4休,2/9休;12/24,1/6開), 10:00-18:00. 背景など詳しいことはあまり知らないのだが、2001年のヒロシマ賞を受賞した 建築家の展覧会だ。ここで模型として展示された Libeskind の設計した実際の 建物の良さ、面白さがよく判った、という気はしなかったけれども、壁や床の 模様や建築模型の大きさで、展示空間はそれなりに楽しめた、そんな展覧会だった。 とにかく模型が大きい。ギャラリー空間ほぼいっぱいで、壁のようにギャラリー 空間を2分していたりするのだ。その大きは、それは建築模型として現実に近づけ ようとするためのものではない。いかにも脱構築主義的な複雑に様々な形が 組み合わさった形は、通常のビルのイメージとはかなり異なるうえ、真っ白に 塗られることによって抽象性が際立たされている。 ギャラリーの床や壁も、実際の建物が置かれるコンテクストを再現するわけでなく、 白黒で文字や図形などが模様として大きくプリントされているだけだ。その模様は、 全く建物の目的と関係ないわけではないが、説明するようなものではない。 結果として、建築模型というより巨大な彫刻作品を観ている感じだ。いや、 全容がほとんど見渡せないので、むしろ残った空間を楽しむ作品という意味で、 空間インスタレーション作品と言った方がいいだろう。Felix Nussbaum Haus や Jewish Museum Berlin の模型など、建物の模型というよりも、脱構築主義的形状の ギャラリーのパーティションかと思う程だ。 その複雑に区切られた空間を体験するという意味で、Libeskind の建築観を体験 させられているのかな、とは思った。そして、白黒で複雑そうに見えるその空間を 歩くのはそれなりに面白かった。しかし、ギャラリー空間と実際に建築物が置かれる 空間は違うし、いくら巨大な模型といはいえスケールは違う (ビルの高さが身の丈 程度になる)。それに、建築物や空間の面白さはマクロな形状だけでなく、この展示 では抽象化されているミクロなディティールにもあると思う (建築家というより 内装デザイナの仕事なのかもしれないが)。そういう意味で、この展覧会で模型に なっていた Felix Nussbaum Haus や Jewish Museum Berlin、Imperial War Museum といった建物の実物が面白いかどうかという手がかりには、あまりならないなぁ、 とも思ってしまった。そういうことを伝えることを目的としている感も無かったので、 それで良いように思うけれど。 2003/1/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕