『アンダー・コンストラクション アジア美術の新世代』 _Under Construction: New Dimensions of Asian Art_ 国際交流基金フォーラム, http://www.jpf.go.jp/ 赤坂2-17-22赤坂ツインタワービル1F (溜池山王), tel.03-5562-3892. 東京オペラシティアートギャラリー, http://www.operacity.jp/ag/ 西新宿3-20-2 (初台), tel.03-5353-0756. 2002/12/7-2003/3/2 (月休;12/24-1/6,2/9休), 12:00-20:00 (東京オペラシティアートギャラリー金土12:00-21:00). インド、インドネシア、韓国、タイ、中国、日本、フィリピンの7カ国の現代美術の 展覧会。アーティストとキュレータの共同プロジェクトということで、ある少数の 企画者の方向性を強く出すというより、多様性を出すことを意思した企画だった せいか、全体として漠とした印象がしたのは否めない。 今回の展覧会には参加していないが、タイの Navin Rawanchaikul の作品などを 連想するところが多かった。Navin Rawanchaikul を初めて観た 『東南アジア 1997 来るべき美術のために』展 (東京都現代美術館, 1997) からもう5年以上経つのか、 と思ったし、その頃によく観ていたアジア現代美術展から、何か大きく変わった ような印象は受けなかった。 企画としては、雑然に多様性を示すより、ここ最近の動きを整理するくらいのことを して欲しいとも思ってしまった。しかし、マメにアジアの現代美術をチェックして ない僕にとっては、良いショーケースにはなったように思う。 日本の現代美術でも流行しているプロジェクトのドキュメンテーションのような 作品や、雑然と社会の模式化するような作品の多くは、ほとんど楽しめなかった。 しかし、出展作家がこれだけ多ければ、面白いと感じる作品もそれなりにあった。 というわけで、印象に残った作家について個別に簡単にコメント。まずは東京 オペラシティアートギャラリーの会場で展示されていた作品から。 最も印象に残ったのは、サキ・サトム (Saki Satom, 日本) の回転ドアを捉えた ビデオ作品。3つ並べることによって ソウル、北京、東京という撮影場所を抽象化 する感じは、Becher の写真作品のビデオ版という感もあるし。その抽象性が、 回転ドアの形式的な動きの面白さ (子供がドアを回して遊んでしまうような) を 際立たせる感じもあって良かった。ま、映像の中でも、実際に作家 (か、作家が 依頼した役者) がドアの中を回り続けていたけれども。ちょっとした遊び心で それはそれで面白いと思ったけれども、そういうの抜きにした方が、形式的に スマートになってそれはそれでカッコ良くなるかな、と思ってしまった。 王 功新 (Wang Gongxin, 中国) の四面に門をビデオを投影する作品 _Red Doors_ (2002) は、時折門が開いていろいろなものを見せてくれるのだが。そこに写し 出されたものというより、四面は一度に全て見渡せないため門が開き始めるのを 耳で捕らえてそれから振りかえって観る、というような観方になるのが面白かった。 投影されたビデオ映像が粗かったのはちょっと惜しかったかもしれない。 国際交流基金フォーラム の展示作品で最も印象に残ったのは、Montri Toemsombat, _Fake Me_ (2001)。有針鉄線で作った服というか甲冑のようなものと、それを着て いる様子のビデオ作品。身動きが取れない様子が痛々しいけど可笑しい、というのが 良かった。 あとは名前を挙げておくにとどめるが、Kim Boem (韓国) のビデオ作品や、 Alfred Esquillo (フィリピン) の2枚の絵画を細く切って編み上げた作品なども 良かったように思う。 2002/1/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕