ヴォルフガング・ライプ (Wolfgang Laib) 東京国立近代美術館, http://www.momat.go.jp/ , 千代田区北の丸公園3-1 (竹橋), 03-5777-8600. 2003/1/18-3/9 (月休), 10:00-17:00 (金10:00-20:00) Germany 出身で1970年代以降に活躍している美術作家の回顧展は、本館一階の 半分だけを使った小規模ながら、落ち付いた感じで楽しめた展覧会だった。 基本的にミニマルに物の質感を際立たせるような作品を作っている。それも、 工業製品というより、もっと自然な素材なのだが。ただし、その素材が、 ミルクであったり花粉だったり。小枝や枯葉を大きく正方形に敷き詰める ような作品 (Andy Goldsworthy とかが作りそうな) に比べて、ぐっと抽象的。 言われなければ、顔料を敷き詰めているだけ、と思うようなところすらある。 もちろん、花粉であるか顔料であるか、というより、黄色い細かい粉のふわっ とした印象を受ける質感がいいのだけれど。 ミルクを床置きの非常に浅い正方形の容器に貼った作品は、液面が静かで、 一見液体が張られているようには見えないのだけれど。ぐっと目を近づけて みると、細かい埃が浮いていたりして、液体だということが判る。また、 そこまで目を近づけると、ミルクの匂いがしたりするのも、面白かった。 ただ、ミルクや蜜蝋を使った作品など、もっと匂いがするかと期待したところ もあったのだけれど、あまりしなかったのは残念。それから、あまりに静的で、 敷き詰められた花粉や張られたミルクを乱してみたい、という気分になる時も あった。もちろん、実際にはしなかったけれど。 最近の作風は、蜜蝋で舟を形作るなどミニマルな感じから脱却しようという 感じなのだが、半端に象徴性が入っていて、いまいちに感じてしまった。 2003/02/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕