Gerhard Richter 東京ワンダーサイト, http://www.tokyo-ws.org/, 文京区本郷2-4-16 (水道橋,お茶の水), tel.03-5689-5331. 2003/4/5-5/18 (月休;5/5開;5/6休), 11:00-19:00. Germany の現代美術作家の展覧会。前に観た _Atlas_ (川村記念美術館, 2001) (レヴューは http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/01051901 ) は、作品の裏側の 種明かしという感じの展示だったこともあり、まとまった形で普通に作品を 観たのは _Editionen 1967-1991_ (フジテレビギャラリー, 1996) (レヴューは http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/96040601) 以来だろうか。作品にあまり 重なりが無いため、新鮮に観ることができた。 菱形の _Ophelia_ (1998) や _Guildenstern_ (1999) は、絵具があわ立ち流れた ようなところを写真に撮ってプリントしたものと思われるが。このような手法は、 23 Envelope や Russell Mills の手掛けるジャケットデザインで使われる技法を 連想させられるところもある。絵の絵具のマチエールだけをモノクロ撮影した写真 128枚を壁一面に並べた _128 Photographs From A Picture_ (1998) にしても、 縮小して本の表紙やレコードのジャケットにしてもカッコ良さそう、とも思う。 しかし、最も気にいったのは、_Ravine_ (1997) や _Cathedral Corner_ (1998) のような、コントラストが強い屋外の写真で、それも、色褪せてセピアっぽく なりピンぼけになったように処理 (絵で起こしたのだろうか?) して、プリント したもの。曖昧な色合いといい、コントラスト強いが暈けたような感じといい、 写っているものでなく、その色や質感だけでちょっとノスタルジックな雰囲気を 作り出しているのか、とてもカッコ良かった。 Richter 作品というのは、印象派以降の具象から抽象への道を、写真が一般的に なった20世紀後半の状況で改めて辿り直している、とでもいう感じだが。 レコードジャケットなどでの抽象的な写真使いと親和性の高い手法ともいえる。 しかし、_Atlas_ の後にこうして普通の作品を観て、コンセプト的な面の面白さも あるけれど、色合いや質感といったところでいいと思える作品だなぁ、と実感した。 2003/05/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕