『E.A.T. ―― 芸術と技術の実験』 _E.A.T. --- The Story of Experiments in Art and Technology_ NTT ICC , http://www.ntticc.or.jp/, 西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4階 (初台), tel.0120-144199. 2003/4/11-6/29 (月休), 10:00-18:00. 技術者 Billy Kluver とアーティスト Robert Rauschenberg を核に1960年代半ばに 結成され1970年代半ばまで精力的に活動した、科学者・技術者とアーティストとの コラボレーションを助ける技術的サービスのプログラムを提供していた組織 E.A.T. の回顧展が行なわれている。 ギャラリーA の展示パネルは展覧会カタログ (NTT出版, ISBN4-7571-7021-1, 2003) にそのまま収録されているし、そもそも立読するようなものではないと思うので、 展覧会としてはむしろドキュメンタリー・フィルムやギャラリーBの作品展示を観る ものだろうか。展覧会オープニングの頃に行なわれた講演会で聞いた E.A.T. の活動 から僕が連想したのは、1990年前後の日本のインターネット (より正確には JUNET) の雰囲気だった。だから、展覧会カタログの 森岡 祥倫 「無為の合一」の中で、 E.A.T.と初期インターネット・コミュニティーとを、共に「民主主義の実現過程に ついて再学習を行う」過程として重ねて見ていることに、僕はとても共感する。 フロンティアに向かって急速に拡張している一瞬にだけ表面化する、協働のスタイル なのかなぁ、と、展示で改めて感慨深く感じた。 ま、そういう感慨抜きに楽しめる展示としては、Trisha Brown + 中谷 芙二子, _Opal Loop_ (1980/2002)。Trisha Brown のダンスの舞台を捉えた映像を 霧のスクリーンに投影したものなのだが。霧のスクリーンが想像した以上に 薄いものなのにちょっと感動。けっこうはっきり映像が投影されているので、 手を濡らすほど濃いものだろうと予想していたのだ。揺らぐ映像の質感も面白いし、 手を入れたり通りぬけたりすることができるスクリーンという感じの面白さもあった。 作品そのものより、観客の様子が面白かったのが、Robert Rauschenberg, _Solstice_ (1968)。シルクスクリーンのプリントがなされた透明なアクリル板が 填め込まれた自動ドアが5枚連続している作品で、通りぬけながら観賞するように なっている。しかし、誰も作品を通り抜けようとしないのだ。その代わりに多くの 観客は、誰かが作品が通り抜けていく様子を観ようと、周囲で構えているのだ。 それも、かなりの人が、様子を撮影しようとデジタルカメラやカメラ付き携帯を 構えているという。テレビ世代の観賞法だろうか、と、ふと思ってしまった。 そういう人たちを尻目に、ドアを通りぬけて遊ばせてもらったけれども。 2003/05/25 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕