實松 亮 『Forgotton Elements』 OFF SITE, 千駄ヶ谷5-23-7 (代々木), tel/fax.03-3341-5557 2003/5/6-6/28 (日月休), 18:00-22:00 (土15:00-22:00). 脱線音狂トリオ OFF SITE (代々木) 2003/5/10, 20:00-22:00 - 實松 亮 (声,小道具), 山田 民族 (electric guitar,etc), 高岡 大祐 (tuba). Trinitron vs Optron OFF SITE (代々木) 2003/6/14 20:00-21:30 - 實松 亮 (テレビ,パソコン,etc), 伊東 篤宏 (蛍光灯,etc). 展覧会とその関連企画の中で最も楽しめたのは、Trinitron vs Optron のライヴ。 テレビやFMラジオなどで用いられている周波数変調方式では、搬送波が弱いと (もしくは搬送波成分がほどんど無い電磁ノイズを復調しようとすると) 激しい 雑音・サンドストームを生じるわけだが、その原理を使っての光と音の演奏だ。 蛍光灯点灯時に発生する電磁ノイズや、パソコンで発生させたノイズ的な信号を、 スケルチ無しのテレビやFMラジオを通して、音響映像化するというもの。 ホワイトノイズを使うわけではないので、音のテクスチャも様々だし、蛍光灯の 点滅やテレビ画面のサンド・ストームの変化が伴うのも面白い。それに、 實松ソロ、伊東ソロ、デュオと演奏したのだけれども、伊東の方が搬送波近辺で 勝負しているという感じで、2人のテイストの違いが出ていたのも、面白かった。 FMラジオをまだよく聴いていた20年近く前、番組に飽きると、チューニング ダイヤルを適当に回して、ザーザーいう音の微妙な変化を聴いてみたりした (何十秒もやるわけでないが) ことを思い出したり。そんなちょっとした悪戯心も 感じるパフォーマンスだったように思う。 展示の方は、微妙に色が変わっていく抽象的なビデオ映像の投影を、やはり ノイズ的な音付きで行うもの。壁面にカラカラと動くオブジェや、ビデオに似た 色を施されたティッシュペーパーの箱もあるが、やはり見入るのはビデオだろうか。 Mark Rothko をビデオで動くようにしたもの、もしくは、James Turrell の ビデオ化、という感じもあるのだが。ビデオでの複製物みたいな印象を受けて、 感覚に直接訴えるという感が小さい気がしたのは、投影面が小さいからか、 投影の輝度に比べて周囲が明るいからだろうか。 最初のライヴ・パフォーマンスの、脱線音響トリオは、楽器や小道具の立てる 微かな物音を使った演奏で、いわゆる「微音系」といわれるようなものといえば そうなのだけれども。tuba と electric guitar のミュージシャンに挟まれて、 ノンミュージシャンがいるという感じが、音がというより、見た目が面白かった。 こういう視覚的な配置であれば、ノンミュージシャンが音だしに使う方法や道具に 拘りが感じられないのも許せるかな、とは思う。 手法なりへの拘りがあまり強く感じられないのは、この展覧会全体にも感じる ところではあるが。作家のパーソナリティを知っていると、そういう多様性も 含めてらしいとは思うけれど。全体としてのインパクトが弱まっているように思う。 2003/06/15 嶋田 TFJ 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/