『越後妻有アート・トリエンナーレ 2003』 http://www.echigo-tsumari.jp/ 十日町市、中里村、津南町、松之山町、松代町、川西町 http://www.tiara.or.jp/~tumarigo/ 2003/7/20-9/7 新潟県妻有郷6市町村を舞台に開催されているアート・イベントの第二回。 今回は、実行委員会事務局が主催するバスツアーに参加して、1泊2日で観てきた。 とうてい2日間で観きれる規模ではないのだけれど、頑張って観て回るというのも ちょっと違うように感じる、ゆったりとした感じを楽しみたいイベントだろう。 非常に感動した凄い作品があったわけではないし、凄いことになっているわけ でもないけれども、ちょっとしたお祭気分で楽しめたように思う。事務局が主催 するツアーで地元密着の部分を観る機会が多かったせいなのかもしれないが、 前回観たときよりも、地元の人も一緒に盛り上がっているのだろうか、と感じた のも好印象だった。 今回、最も印象に残ったのは、松之山町上湯地区。核となる Marina Abramovic の『夢の家』 (_Dream House_) は、2000年の作品なのだけれども、観たのは 今回が初めて。かなり民家に手を入れてたものを予想していたが、寝室以外は、 ほとんどもとのままに感じられた。Abramovic の作品云々というよりも、 地区自体が山里の雰囲気を良く残していて、とても懐かしかった。帰省なら まだしも、普通に産業化された観光では、こういう山里を楽しむのは難しいので、 作品をネタに楽しみに行くというのも悪くないだろう。 8,000枚の白い布を使った 新田 和成 『ホワイトプロジェクト』 など、物量に よる力技だと思うが、単純に圧倒的だった。一枚一枚に人手をかけているという ことで、コンセプト的に大量複製品を使ったミニマルな作品から逃れている わけだし、そこにかかる手間に思いを馳せることができるわけだけれど。 ただ、現在だと、インターネットを使った大量動員のハック (悪戯) も一般化 しつつあるだけに、そういったこととの差異化も難しいなあ、と観ていて思って しまった。量によるインパクトだけでいいのか、といっても、志が「良」ければ いいのか、という意味でも。 実際はちょっとしたこぢんまりした作品も多く、それぞれそれなりに楽しんで はいるのだが、一度に沢山観て回ることもあって、全体の中ではどうしても 印象が薄くなってしまうのは、ちょっと惜しいかもしれない。そんな中では、 Didier Courbot の _A Stone In The Pocket_ など、ガイドブックにも載って いないゲリラ的な作品で、面白いと思ったが。単にエントリが遅かっただけで 非公認というわけではないとのこと。オフ・フリンジ的な活動がもっとあると 面白いと思いつつ、このような懐の広いイベントの場合、その余地はあまり 無いのかもしれないなぁとも思う。 今回は、関連する音楽やパフォーマンスも観ることができた。3年前と違って、 演劇・ダンスや音楽のイベントが増えたようにも感じる。こういうイベントが あると、スケジュールにメリハリが出来て、観に行こうというきっかけに なりやすいように思う。そういう意味でも、少しずつ充実していって欲しい。 観られたものについて、以下に簡単なコメントを。 北東アジア音楽祭は、それぞれの演奏が悪かったわけじゃないけれども、 それぞれの演奏が短くて、不完全燃焼した。アイヌの口琴ムックリを初めて 聴いたし、他のミュージシャンとの共演とか、様々な形で聴いてみたかった。 一組のミュージシャンに1時間くらいの枠をあてる普通の音楽フェスティバル のような形でやって欲しかったようにも思うが、音楽のポピュラリティからして、 そこまで機は熟していないだろうか。 パフォーマンスについては、今回は、演劇・ダンスの文脈のものではなく、 現代美術の文脈のもの。Heri Dono の _Golden Baffalo_ を観ることが出来た。 東南アジアの作品によく感じることなのだが、赤いプラスチックのメガホンとか アンパンマンのお面とか、普通なら避けるだろうと僕なら思うような安っぽい ものを使ってしまう、ちょっと間抜けな感じの仕上り。それが悪いわけではなく、 一種のテイストになっていると思うけれど。 参考までに、ツアー中に撮影した写真を以下で公開している。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/photoalbums/Tsumari2003/index.html 2003/08/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕