水と油 『急降下』 世田谷パブリックシアター (三軒茶屋) 2003/07/21, 19:30-21:00 - 作・演出: 水と油. - じゅんじゅん (高橋 淳), ももこん (藤田 桃子), おのでらん (小野寺 修二), すがぽん (須賀 令奈). マイムを出発点としてフィジカル・シアターとジャンル分けされるような舞台作品 を作るカンパニーの新作は、一時間半という時間もあっという間の面白さだった。 ちなみに、僕が彼等を観るのは、『机上の空論』 (2002) に続いて2作目。 テーマの一つに、タイトルにあるように落下における無重力感の表現があるわけ だけだけれども、それだけで1時間半持たせているわけではない。ミニマルに 扉だけを用い、身体表現とライティングによって舞台を分節化しつつ、 書類や鞄の受け渡しの動作によって、分節化されてた空間が一瞬融けあうような シュールだったりユーモラスだったり不条理だったりする感覚は『机上の空論』 と同様。今回は、机や椅子を滑べらせて移動させながら演じることにより、 空間が連続的に変型流動していくような感じを表現していたのも、面白かった。 落下を演じるときも、上下方向だけではなく、椅子を滑べらせることによって 横方向への落下まで扱っていたのも、面白かった。 もちろん、机や椅子などの道具を使うアイデアを舞台の上で生きたものにして いるのは、身体表現の能力なのだが。身体に様々な力がかかっているかのように 表現するマイムならではの面白さも堪能できる。特に手や肩で落ちそうになる 自分の頭を支える じゅんじゅん のソロのシーンなど、道具無しで身体表現の 面白さを堪能できるシーンだろう。 オムニバス公演の中の短編だった前回に比べてフルの長さの舞台を観ていて、 実際のところ、4人のキャラ立ちの良さが、最も楽しめるところかもしれない、 と思ったりもした。クールな じゅんじゅん、アクが強そうな おのでらん、 二枚目と三枚目の間を往来する すがぽん、という感じで男性陣のキャラの 住み分けもうまくいっているように感じる。 物足りなく感じたところを強いて挙げれば、『机上の空論』にあった高さ方向の 動きが生む立体的な拡がりあまりなかったこと。代わりに奥行方向を使っていた という感もあったのだが。高さ方向の動きから生じるダイナミックさも、 もっと楽しんでみたかったように思う。 source: 水と油, http://www.mizutoabura.com/ 世田谷パブリックシアター, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ 水と油 『机上の空論』 レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/02092201 2003/08/21 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/