『サウンディング・スペース ― 9つの音響空間』 _Sounding Spaces --- 9 Sound Installations_ NTT ICC, http://www.ntticc.or.jp/ 西新宿3-20-2東京オペラシティタワー4階 (初台), tel.0120-144199 2003/07/11-09/28 (月休), 10:00-18:00. - Alvin Lucier, Christina Kubisch, David Cunningham, 久保田 晃弘, Rafael Toral, Edwin Van Der Heide, Richard Chartier & Taylor Deupree, Alejkandra & Aeron, Superster サウンド・インスタレーション作品を集めた展覧会。比較的受動的に聴くだけに 近い作品もあったけれども、観客のアクションを求めるような作品もあり、 それが最も面白かった。 最も楽しめたのが、David Cunningham, "The Listening Room", "Untitled" (2003)、 部屋に2台のスピーカーと窓ガラスに2台のマイクが設置されている作品だ。 スピーカーとマイクの関係は、璧を介して向き合うような感じに設置されているが、 減衰して無音になったり、増幅してハウリングしたりしない、ぎりぎりの所で チュューニングされているようだ。マイクの前で大きな音を出してみても、 それをトリガにハウリングすることはなかったので、安定化も計算済のようだ。 電子的なノイズがゆったりと波打っている。しかし、部屋の中を動きまわると、 その波打ち方が微妙に変化する。他に客が入ってこないことをいいことに、 ひとしきり、部屋の中で、走り回ったり、踊ったり、上着を振り回して風を 起こしてみたり、と、いろいろ試していたら、そのままハウリングするかと思う ような大きな音になったことがあった。外にいたフェイスさんが、何事かと中を のぞき込んだのも面白かったが。 そういうフィードバックを使った作品といえば、Alvin Lucier, "Empty Vessels (Tokyo)" (1997-2003) もあった。ガラス瓶の口につっこまれたマイクと、 スピーカー部屋の両側に向き合うようにならべられた作品なのだが。これも、 間の空間の状態で音が変わるわけで、瓶を覆うように立てば、それに対する音が 小さくなる、というような変化はある。しかし、Cunningham の作品ほどの変化は 無く、ちょっと単調だったろうか。このようなフィードバックを使った作品は、 系の固有振動数に音が収束しがちで、ノイズといっても実際のところは音は単調 になりがちだ。Lucier の作品の場合、様々な大きさ形の瓶をならべることによって、 様々な音が出るようにしていたし、瓶のライティングも奇麗だったし、工夫して いたように思うけれども。 Rafael Toral, "Echo Room" (2001) は、部屋のまん中にマイクスタンドが 立っており、観客がマイクに音を吹きこむと、減衰した音がちょっと遅延して きこえる。これといった意外性も無いし、マイクスタンドというのが、ちょっと 見た目もいまいちだったろうか。 久保田 晃弘, _Material AV --- Resonant Interface_ (2003) は、2枚の ビデオプロジェクタのスクリーンの間に人が入ると、その物音に反応して、 投影される映像が変化する、というもの。暫くは、スクリーンの間でドタバタ 音を出して楽しんだけれども、スクリーンの変化というのは、意外と目に 入らないもので、どんな姿勢になっていても耳に入ってくる音に比べて、 全身的な動きに対しては弱いなぁ、と、Cunningham の作品と比較して思った。 ま、そんなに動きまわることを想定した作品ではないのかもしれないが。 無音室を使った作品が一つあって気になったのだが、この日は整理券が終了 しており鑑賞できなかった。一度だけ再入場が可能なので、後日挑戦しに 行きたい。 しかし、観ていてちょっと物足りないというか、ICCらしいと思ったのは、 ユーモアを感じることが少なかったこと。例えば 松蔭 浩之, "Star" (2000) (レビューは http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/00071301 ) のような作品は こういうところには置かれないだろう。 2003/08/31 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/