Betty Nansen Teatret _Woyzeck_ 東京国際フォーラムCホール (有楽町) 2003/09/19, 19:00-21:30. - Direction, Design and Lighting Design by Robert Wilson. - Music and Lyrics by Tom Waits and Kathleen Brennan. - Allan Klie (Woyzeck), Kaya Bruel (Marie), Marten Eisner (Doctor), Marianne Mortensen (Doctor), Ole Thestrup (Captain), Hanne Uldal (Margret), Niels Bender (Andres), Morten Staugaard (Karl, an idiot), Tom Jensen (Drum major), Troels Il Munk (Carnival announcer), Morten Thorup Koudal (The son, Christian), Bent Larsen, Martin Hoeir Christensen and others (Young men and girls). Orchestra: Bent Clausen (conductor,piano,marimba,banjo,drums,percussion), Bebe Risenfors (harmonica,pumporgan,bells,clarinet,trumpet,tuba, trombone-alto,percussion), Johan Norberg (trombone-tenor,tuba,percussion), Berit Hessing (cello), Pelle Fridell (alto and tenor saxophones,clarinet, bass clarinet,flute,flute piccolo), Hugo Rasmussen (bass). 2000年11月に Copenhagen, Denmark の Betty Nansen Teatret が初演した Robert Wilson と Tom Waits / Kathleen Brennan のコラボレーション作品 _Woyzeck_ を観てきた。Wilson と Waits / Brennan のコラボレーション としては、_The Black Rider_ (1990)、_Alice_ (1992) に続く3作目にあたる。 Robert Wilson といえば、Philip Glass との _Einstein On The Beach_ で 来日しているが、そのときは観ていない。今回、観るのは初めてだ。 ちなみに、題材は Georg Buechner の有名な戯曲 _Woyzeck_ (1837) だ。 少々冗長に感じたけれども、光による演出が楽しめた舞台だった。 その仕上がりは、ブラックライトは使ってないけれど、大人向けの (ブラック) ライトシアター (そういえば、Josef Nadj の _Woyzeck_ を観たときも、 ブラックライトシアターを連想したのだった) というか、等身大の人間を 使った影絵芝居というか、その光の使い方、結果としての雰囲気だけでも、 とても楽しめた。背景の強い光によって、俳優はシルエットとして見える ことが多い。わざとストップモーション的にぎこちない動きをさせることも あって、まるで影絵芝居を観ているようだ。衣裳や髪型もシルエットで映える ように工夫されていて、それも面白かった。さらに、単色のスポットライトを 使ってシルエットを着色するような効果を出したり、白色のスポットライトで、 一部だけシルエットと実体を反転させるようなことをしたり。舞台装置の方が 最小限に押えられていただけに、演出の方が際だって見えたように思う。 しかし、展開の方は、予想以上に丁寧に Woyzeck が少しずつ狂っていく 過程を追っていくもので、逆に、少々、まだるっこしく感じられた。それは、 以前にJosef Nadj によるほとんど物語を解体した _Woyzeck_ を観てるから かもしれない。_Woyzeck_ の物語はそこそこ有名なんだし、筋を押えるのは そこそこにもっと物語を壊して欲しかったように思う。この舞台では、 Marten Eisner と Marianne Mortensen が一緒にくっついて演じた医者が、 道化というか狂言回しというかそういう役割に近いところにいたように思う のだけれど、彼等にもっと展開をひっ掻き回して欲しかったようにも思った。 Marianne のキレた話し具合とか良かったので、惜しいと思った。見世物小屋 のシーンから始まったことだし、もっと見世物小屋っぽいドタバタになるかな、 とも思ったのだが。 Waits / Brennan の音楽は、Waits 自身が歌ったものを収録した Tom Waits, _Blood Money_ (Anti-, 86629-2, 2002, CD) を以前から聴いていたのだが。 舞台と合わせて聴くと、CDでと違い、意外と Weill / Brecht っぽく感じられた。 _Woyzeck_ がプロレタリアを主人公に置いた元祖プロレタリア文学ともいえる ようなものだということもあるかもしれないが。しかし、役者たちが Waits のような外れ方で歌おうと頑張っているような感じが、ちょっと可笑しかった。 Waits の場合あれで天然だろうし、もっと自然に歌っても良かったように思う。 Waits / Brennan の参加からも判るように、台詞中心のストレートプレイでは なく、歌がメインのオペラに近い展開だった (_Die Dreigroschenoper_ (1931) とか連想したり。ま、_Woyzeck_ が有名になったも、Alban Berg のオペラ _Wozzeck_ (1920) でなんだが)。そのこともあって、同じ台詞やフレーズの くり返しが多く、英語でも判りやすかった。_Woyzeck_ の粗筋を知っている こともあるかもしれないが。ちょっと聴き取れなくても、一回字幕を見れば 暫く見なくて済むし、字幕を見なくてもくり返し聴いているうちに判る。 言葉の壁はほとんど感じられなかった。字幕を見るくらいなら、舞台の光の 移り変わりを追うほうがお薦めだ。 sources: Robert Wilson, http://www.robertwilson.com/ Betty Nansen Teatret, http://www.bettynansen.dk/ _Woyzeck_ at Betty Nansen Teatret, http://www.bettynansen.dk/gallery/woyzeck Tom Waits, http://www.officialtomwaits.com/ Tom Waits, _Blood Money_, http://www.anti.com/artist.php?id=86629 _Woyzeck_ 日本公演情報, http://www1.ocn.ne.jp/~ncc/woyzeck/content.html 東京国際フォーラム, http://www.t-i-forum.co.jp/ Josef Nadj, _Woyzeck_ のレビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/00021101 2003/09/20 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/