Rosas, _Once_ (2002) 彩の国さいたま芸術劇場大ホール (与野本町), http://www.saf.or.jp/ . 2003/10/04, 15:00-16:10. - Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker. Music: Joan Baez, _In Concert Part 2_ (Vanguard, 1963). - Anne Teresa De Keersmaeker. Rosas の振付家、芸術監督である De Keersmaeker が、一人、US のフォーク シンガー Joan Baez の初期のアルバム _In Concert Part 2_ (Vanguard, 1963) をかけながら踊るという作品。 De Keersmaeker も若くないし動きの凄さとかは期待していなかった。実際、 比較的ベーシックな動きを中心に、ビート感も控えめなフォークソングに 合わせて緩く踊るという感じだった。舞台美術も控えめ。舞台後方と右手を 軽く隠すように荒い目の布がかけられているだけ。そんなミニマルな舞台も、 ギター一本で歌うミニマルなフォークソングは、ぴったり合っていたように思う。 というか、フォークソングに合わせて踊る、というのは、ありそうでなかなか 無いだけに、それだけで新鮮に感じられた。 最初しばらく無音で踊ったあと、_In Concert Part 2_ がかかり始める。 ライブ盤ということもあり、客席に座って劇場のスピーカーから聴くと、 まるでステージに Baez が立って歌っているかのように聴こえる。そんな ステージに、踊る De Keersmaeker が見えるので、時おり乗り移っている ような印象すら受ける。というか、De Keesmaeker の踊りを背景に、Joan Baez のコンサートを疑似体験しているような印象すらする舞台だった。それだけで 充分に楽しめてしまった。 特に曲順とかは弄らず頭からずっとかけていくのだが、途中、音量を下げて、 De Keersmaeker が自ら歌いながら踊るところがある。それに選ばれた曲は "We Shall Overcome" と "Long Black Veil" だった。Joan Baez はちゃんと 聴いたことが無いけれども、前者は公民権運動のアンセムになったとても 有名な曲だし、後者のカントリーのスタンダード曲も、Marianne Faithful や Sally Timms (Mekons) のカバーでとても馴染み深い。そんなこともあって、 思わず、一緒に歌いたくなってしまった。(心の中では歌ってたけれど。) というか、僕でも口ずさめるような曲を選んだということは、本当は客席の 皆に一緒に歌って欲しかったのではないか、と思ってしまった。特に、 "We Shall Overcome" は、皆で歌うもののように思うし。実際、ステージ 後方左下には、歌詞がプロジェクタで投影されていた。歌を知らなくても それを見ながら歌うことができただろう。 ミニマルなフォークにミニマルなダンス、というのが良かったように思う だけに、最後に映像を加えて、というのは、ちょっと過剰になってしまった ように思うけれど。 確かに、こういう作品は、ダンスより選曲や演出の勝利、といえばそうかも しれない。しかし、やはり、若いダンサーの身体や動きではこういう味は 出せなかったようにも思う。NDT III を観ていても思うのだが、こういう のが、歳を取ったなりのダンス表現のありかたなのかなぁ、とも思う。 sources: Rosas, http://www.rosas.be/ _Once_, http://www.rosas.be/Rosas/frames_prod_once.html Joan Baez, http://baez.woz.org/ 2003/10/05 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/