Philippe Decoufle, _Iris_ (2003) 神奈川県民ホール大ホール, http://www.kanagawa-kenminhall.com/index_n.html 2003/10/12, 16:00-17:30. - Director: Philippe Decoufle. Assistant: 伊藤 千枝. Music: Claire Touzi Dit Terzi, Tao Hiboo. Set Design: 鯱丸 邦生, Pierre-Jean Verbraeken. Lighting Design: 足立 恒 (インプレッション). Costume: 武田 園子. - 小浜 正寛, 伊藤 郁女, Miya Kim, Muriel Corbel, Alexandra Naudet, Stephane Chivot, Jean-Baptiste Andre, Christophe Waksmann, Oliver Simola, Jiang Yang, Fei Bo, Lu Xin-yun. ダンサーと映像との共演、特に、予め撮影加工済みのものではなく、ライヴで ダンサーを撮影して加工したものを投影しての映像とダンサーの絡みが楽しめた 舞台だった。しかし、その一方で、今までお馴染の空中芸やジャグリングと いったものは全く無くなり、人の動きの面白さ自身で楽しめるところはあまり 無かった。それは残念だった。 ライヴ加工映像とダンス、というのは、『フィリップ・ドゥクフレ研究ワーク ショップ習作公開』 (赤レンガ倉庫, 2002/10) の際に、Decoufle 自身がソロで 踊って見せてくれたものでもあるが。さらにいろいろアイデアを展開していて、 それをいろいろ見せてくれるのが、とても面白かった。一年前は時間遅れ反復も 一次元方向で単純だったのだが、それを万華鏡のように反復を展開したり。 しかし、最も印象的だったのは、Claire Touzi Dit Terzi が弾く kalimba (親指ピアノ) の手もとの映像越しにダンサーを捉えた映像を背景に大写し しつつの男性ダンサーのソロだ。kalimba の音を出す手の動きが微かだけに、 その向うに見え隠れする映像の中でのダンサー、そして、手前で実際に踊って いるダンサーの動/静/動の階層構造が面白かった。ちょっと粗く感じられる 青みがかったモノトーンの映像いうのも、渋く感じられた。 映像とダンスとの絡みがライヴ加工ものをメインに使いつつ、その中で録画編集 済みの映像を使うことによって、録画編集済みのものまであたかもそれもライヴ であるかのように思える効果が生まれていたのも面白かった。舞台の上での 動きとほぼ同じ動きを、路上、スパーマーケットや図書館といった空間の中で したものを、主にダンサーの視点で撮影したものを投影していたものは、 まるでステージの上にその空間が立ちあらわれたかのような感じもあるし、 投影された映像と実際のステージの微妙な差異は、ユーモラスで笑いを誘う ものでもあった。 その一方で、ライヴ加工映像の扱いの印象が強いことで割りをくっている ところもあるとは思うが、身体の動き自体の面白さとなるととても印象が薄い。 あえて挙げるとしても、中国出身のダンサーによる、足を高く上げ飛ぶように 回る京劇を思わせる動きくらいだろうか。あとは、フランスの男性ダンサーが 3人並んで舞台中央の最前部に腰かけ、音楽に合わせて、喧嘩というか小突き 合いの動きを中ばマイム的に表現したものも、ユーモラスで気にいった。 一年前の『フィリップ・ドゥクフレ研究ワークショップ習作公開』で、Decoufle は日本固有のフォーク的な動作の型としてウルトラマンの動作・ポーズに 注目していた。これは、バルタン星人対ウルトラマンを思わせるシルエット パフォーマンスとして作品に折り込まれていた。ウルトラマンという文脈を 知る客が多いということもあって、確かに、笑いを取っていたけれども。 そういう文脈抜きに、それも影ではなく、身体の動きとして面白く構成でき なかったのだろうか、と思ってしまった。 舞台装置は、高度成長期かその直前くらいの日本の住宅のようなものが舞台上手に、 下手に木製の電柱を模したものが置かれていた。舞台は、その頃の路地か空地か、 ということなのだろうか。しかし、それほど強い必然性は感じられなかった。 そういう舞台装置から半ば観客のように観ている出番ではないダンサー、 ブレイクという感じで入るコミカルなやりとり、というのも、Decoufle らしい 演出だとも思うし、そういう要素も嫌いではない。特に、サーカス的な _Triton 2ter_ のときはそれは生きていたとも思う。しかし、今回は、 そういうのを抜きに、ライブ加工映像とダンサーとの共演に焦点を絞って 構成した方が、かっこいい作品になったのではないかと思った。 Claire Touzi Dit Terzi は自身で楽器 (主に electric guitar) を演奏し つつ "Voix Claire" とも呼ばれる綺麗な歌声を聴かせてくれた。Dit Terzi, _Dit Terzi_ (Boucherie Prod., BP1481, 2000, CD) が好きなだけに、そこで 聴かれるようなちょっとエキゾチックな感じを期待していたのだけれど。 確かに、沖縄民謡を思わせるようなものもあったが、そういう要素は控えめで、 普通に rock 的だったように感じた。 sources: Philippe Decoufle & Cie D.C.A., http://www.cie-dca.com/ _Iris_ @ 『France Dance 03』, http://www.francedanse03.jp/kprogram002.html 2003/10/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/