Nasser Martin-Gousset / Companie La Maison, _Neverland_ 世田谷パブリックシアター シアタートラム, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ 2003/10/31, 19:30-20:40. - Choreography: Nasser Martin-Gousset. - Sophie Lenoir (Emily Bronte), Barbara Manzetti (Cathy), Barbara Schlitter (Isabella), Samuel Dutertre (Edgar), Nasser Martin-Gousset (Heathcliff). Josef Nadj, _Les Commentaires d'Habacuc_ の来日公演の際にダンサーとして 参加しており、Nadj に師事したことがある、という紹介で、それ風のシュールさ を予想していたところもあったのだが。シュールというよりゴスっぽく感じられた 舞台だった。悪くは無いのだが、ふっ切れていない、こぢんまりとまとまって しまっているというあたりが、物足りない舞台だった。 _Neverland_ ということで、_Peter Pan_ のようなエピソードも出てくるかと 思ったが、それは無し。Emily Bronte, _Wuthering Heights_ (『嵐ヶ丘』) が ベースになっていた。 Nadj が物質感でシュールさを感じさせるのに対して、Martin-Gousset がゴス的 というのは、映像的だからかもしれない。実際、様々なアングルでダンサーを 捉えた映像をライヴで加工しバックステージに投影していることが多く、それと ダンスの絡みが見所の一つでもある。先日観たばかりの Philippe Decoufle, _Iris_ も同じようなことをやっていたが、Decoufle が動きの駄洒落とでもいう形式的な 遊びを感じさせることが多いのに対し、Martin-Gousset は映画的というよりも MTV 的な映像を意識して生で作っているような感じだったが。 痴話喧嘩的な動きを元にしたダンスがけっこうあるのだが、その動きが細かめな ことが、こぢんまりとした印象を受ける理由かもしれない。ステージ中央に円く 置かれた柵の中で進行する部分も多く、動きが作り出す空間が周囲に広がって いかない印象を受けてしまった。ダンサーの動きは悪くなさそうに見えたので、 むしろ、振付、演出の問題だと思うが。それも惜しい。シアタートラムという 小さいハコだから観られたけれども、大きなハコではかなりキツイかもしれない。 最も印象に残ったのは、Cathy 役の Manzetti のソロ。白いナイトガウンを着て、 風に吹かれながらふらふらと舞うのだけれど、背景には辛うじてわかる程度に ぼかされた彼女が踊る映像が投影されている。そして、音楽は、ちょっと大袈裟 でロマンチックに歌う男声のソフト目の rock 的なもの (誰の何という曲か 残念ながら僕には判らなかった)。このシーンの踊る女性の姿に映像、音楽の センスから、おもわず David Lynch を連想してしまった。おかげで、後半、 何かと Lynch を連想してしまうことになってしまった。山中の古い洋城の 映像が使われたときは、これが近代的なホテルだったら、と思ったり。白のみの 単調な照明も、青や紫が使われたら、と思ったり。女性ダンサーの衣装がナイト ガウンだというのも Lynch っぽいと感じられたり。エンディングは Kate Bush, "Wuthering Heights" (_The Kick Inside_ (1978) 所収。デビューシングル曲) を使い、Emily 役の Lenoir が口パクで Kate Bush を演じる踊るのだが、 この選曲と映像加工のセンスも、Lynch と共通するところが大きいように 感じられた。Martin-Gousset が、直接 Lynch を意識したというわけではない のかもしれないが。 2003/10/31 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/