畠山 直哉 『ATMOS』 タカ・イシイ ギャラリー, http://www.takaishiigallery.com/ 中央区新川1-31-6 (茅場町), tel.03-5542-3615 2003/11/21-12/20 (日祝休), 11:00-19:00 採掘場を焦点深度深めに模様的に捉えた『ライム・ワークス』シリーズ、 都市を渋谷川を水平線を強調して捉えた『川の連作』シリーズなど、 画面の幾何的構造の面白さを生かした写真を取り続けている 畠山 直哉 の 新作展は、今年の Rencontres d'Arles (Arles, France で開催されている アニュアルの写真フェスティバル) に出展した作品を展示したもの。 以前から大好きな写真家なのだけど、個展で観るのは久し振りだ。 新展開というほどでもないが、相変わらずの作風で、楽しめた個展だった。 今回の作品は、Arles 近郊で撮影されたものだが、2つの作風の組み合わせ となっている。一つは、Fos-sur-Mer の製鉄所で撮られたもので、 吹き上がる蒸気を撮影している。これは、『BLAST』での発破で岩が 吹き飛ぶ様子を捉えた作品の延長ともいえるだろう。吹き飛ぶ岩が作る 球状の塊の代わりに、吹き上がる蒸気の塊を捕えている。こういう一瞬で 消え去るような不定型の塊が好きなんだなぁ、と思ったりしたが。 もう一つは、Camargue の湿原で撮られたもので、画面中央を水平に、 地平線が横切る構図になっている。この画面水平二等分線というのは、 『川の連作』シリーズに連なるものともいえる。この手の写真といえば、 白黒で平坦な水平線を捉えた 杉本 博司 『水平線』シリーズ という ミニマルの極致のような作品があるわけだが。それに比べると、ミニマル とはいえ、カラーだし、湿原というわけで画面下半分はいろいろ写って いるわけで、ぱっと見には半端感を感じた。しかし、暫く見ているうちに、 どの湿原の写真にも、画面下半分に必ず水が写っており、その水が作る 幾何的特徴の違いに気付いたとき、ぐっと、この一連の写真が面白くなった。 崩れたような菱形の池だったり、地平線近傍以外は全て水だったり。 この一連の写真には、製鉄所=人工物=瞬間=不定型 vs 湿原=自然=永続 =水平二等分線、という対比関係もあるのだけど、前者に不定型なものを 後者に幾何的形状が明瞭な水平二等分線を見出すあたりが、ひとひねり 効いていて、それも、ちょっと面白かった。 sources: 畠山 直哉『BLAST & camera obscura drowing』展レビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/98091901 畠山 直哉『Underground』展レビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/99100201 2003/11/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/