『旅 ― 「ここではないどこか」を生きるための10のレッスン』 東京国立近代美術館, http://www.momat.go.jp/ 千代田区北の丸公園3-1 (竹橋), tel.03-5777-8600 2003/10/28-12/21 (月休;11/3,11/24開;11/4,11/25休), 10:00-17:00. - 瀧口 修造, 安井 仲治, 小野 博, 大岩 オスカ−ル 幸男, Erik van Lieshout, Peter Fischli & Peter Weiss, 渡辺 剛, Bill Viola, 雄川 愛, Joseph Cornell. 「旅」をテ−マにしたグル−プ展。旅といえば記念写真、というわけでもないが、 写真作品が印象に残った展覧会だった。 最も印象に残ったのが、渡辺 剛 「Border and Sight」シリ−ズ (2000-2001)。 国境線の左右と対照的な構図で捉えた2枚の写真を大判でプリントしたものを 並べて展示する、というもの。国境線の左右ではなくて男湯女湯を捉えた 屋代 敏博 の1998年頃の作品なども連想させられるが。ハンガリ−とスロバキアの 国境のドナウ川はなるほどと思うけれど、ボスニア・ヘルツェゴビナの サラエボにあるというセルビア人共和国とボスニア連邦の国境が、団地の中の 道だというのも、かなり強いインパクトを残すものだった。 同じく 渡辺 剛 の「Japan 5-O」は、北海道、本州、四国、九州、沖縄の5島に ついて、海岸2km沖合から、海岸線を捉えた写真。確かに、カラ−とはいえ 海岸線が画面を水平に二等分するという構図は、杉本 博司 の「海景」シリ−ズ を思わせるところもあって、もう一捻りしたほうがいいのかもしれないが。 島毎に写真を環状に繋いでライトボックスに付けて廻す、という展示は、 逆に安っぽく感じられてしまい、普通にプリントして展示した方が良かったの ではないか、と思うところもあった。 2枚の写真を組にした展示といえば、小野 博 「When Tomorrow Comes」 (2003) もそう。しかし、対比されているものは明確ではない。ステロタイプな構図の 対比とかを避けたい、というのは判らないではないが、ちょっと微妙過ぎて 印象もいささか漠としてしまったように思う。Peter Fischli & David Weiss, _Airport_ シリ−ズ (1988-2000) となると、国が曖昧な国際空港と、国を 背負った飛行機のマ−キング、というものを対比させようとした写真ではある のだが。やはり、何をもう少し、通しての構図に統一感が欲しいように思う。 何を撮るのか、ではなくて、どう撮るのかに関わる趣味の問題なのかもしれないが。 一方、写真作品以外となると、どうもいまいち。Joseph Cornell, _Anapolis_ (1951) を観ながら、最近の居間的な作りこみの作品の原点はここにあったかと、 感慨があったりはしたが。それから半世紀以上経ってしまっているのだなぁ、と。 2003/12/20 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/