Stevan Berg (ed.) _Naoya Hatakeyama_ (Hatje Cantz, ISBN3-7757-1159-7, 2002, book) 2002年から2003年にかけて、Hannover, Nuernberg, Amsterdam と巡回した 畠山 直哉 の個展のカタログとして制作された写真集が出ている。その主要な作品は ほぼ全て押さえられている。(去年の Ars に出展した _Atmos_ (2003) は当然ながら 含んでいないが)。彼の写真作品の魅力を知るにうってつけの内容になっている。 収録されているのは、以下のシリーズ物の写真作品だ (順は収録順)。 _Lime Works (Factory Series)_ (1991-94) _Lime Hills (Quarry Series)_ (1986-1991) _Blast_ (1995-) _River Series_ (1993-1994) _Underground/River (Tunnel Series)_ (1999) _Underground/Water_ (1999) _Untitled_ (1989-1997) _Untitled/Osaka_ (1998-99) _Still Life_ (2001) _Slow Glass_ (2001) ちなみに、ドイツ版だが、テキストはドイツ語英語対訳となっている。 採石場を焦点深度深めに捉えて採掘によって生じた地形の幾何模様的な面白さを 浮かび上がらせた _Lime Hills (Quarry Series)_、コンクリートで固められた渋谷川 とその上の雑居ビルの並びを水平二等分で画面を分割して捉えた _River Series_、 トンネル断面の形状をフラッシュで浮かびあがらせて捉えた _Underground/River (Tunnel Series)_ など、画面構成の形式的な面白さが楽しめる写真集になっている。 連作を続けて観ることによって形式が際だって面白いところもあるが、一枚だけ 観ても充分かっこいいと思う。 去年末に _Atmos_ (2003) を観た時に、幾何的な形状が明瞭なもの (湿原の地平線) と不定型なもの (製鉄所の蒸気) が対比されているのが面白いと思っていたのだが。 この作品集で、_Underground/River (Tunnel Series)_ のトンネル断面形状と、 _Underground/Water_ の錆などが作りだす模様が、同様の関係にあることに気付か された。昔に _Underground/Water_ だけ個展で観たときは、いまいちだと思って いたのだけど、こうして _Underground/River (Tunnel Series)_ と並べられて、 面白さに気付かされた。_Atmos_ の方が対比のさせかたが洗練されていると思うが。 今まで様々な展覧会で断片的に観てきた写真家だけれど、こういう形でまとめて観た 方が面白さが出てくる作家だと、この写真集を観ていて思う。そういう意味でも お薦めの写真集だ。 sources: Hatje Cantz verlag, http://www.hatjecantz.de/ 畠山 直哉 『BLAST & camera obscura drowing』 展レビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/98091901 畠山 直哉 『Underground』 展レビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/99100201 畠山 直哉 『ATMOS』 展レビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/03112901 2004/01/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/