Patricia Piccinini _We Are Family_ 原美術館, http://www.haramuseum.or.jp/ 品川区北品川4-7-25, 03-3445-0651 2003/12/6-2004/2/1 (月休;1/12開,1/13休;12/29-1/5休), 11:00-17:00 (水-20:00). 今までもバイオテクノロジーの影響などをテーマに作品を作り続けてきた Australia の作家の個展は、クローニングや遺伝子操作などで生まれてくる かもしてない想像上の生物・人物像をリアルな造形の人形として作品化したものだ。 かなり近づいて見ても本物っぽく見えるという意味では以前の合成写真や映像を 使った作品よりもリアルになったようだけれども、それでも、生々しさや 状況的に差し迫った雰囲気とか、そういうものがあまり感じられなかった。 どうも安全なところから眺めてられるような、そんな感じになってしまった。 バイオテクノロジーのような科学技術がライフスタイルや生命観といった価値観を どう変え得るかという問題は、例えばSF小説などが得意としてきたテーマだと思う。 優れたSF小説が具体的な造形なしに読者にリアルさや状況的に差し迫った雰囲気を 読者に与えられるのは、物語を通して状況を構築してそこに読者を巻きこんで いくからのように思う。 そして、Piccinini の作品が惜しいと思うのは、そういう状況構築性、物語性の 薄さだ。例えば、人と豚のあいのこのような生物 "The Young Family" や、 人とミーアキャットのあいのこのような生物 "Leather Landscape" にしても、 まるで動物園の飼育場にいるかのような展示なのだ。その結果、彼等の生活が 自分の生活と抜き差しならないところで絡んでいると感じさせるよいうより、 単に珍しい生物を眺めている、という感じになってしまう。 といっても、今までの、人工と自然の境界みたいなテーマよりも良くなってきて いるように思うし、今後、この造形を基に物語性を強めていけば、けっこう 面白くなりそうな気もする。 sources: Patricia Piccinini, http://www.patriciapiccinini.net/ Patricia Piccini, _The Breathing Room_ 展レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/01082202 2004/01/17 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/