Dan Graham, _Dan Graham by Dan Graham_ 千葉市美術館, http://www.city.chiba.jp/art/ 千葉市中央区中央3-10-8, tel.043-211-2311 2003/12/01-2004/02/01 (月休;12/29-1/3休;1/12開;1/13休) 10:00-18:00 (金-20:00) 1960年代後半から活動するUSの現代美術作家の自身の企画による回顧展だ。 僕が Dan Graham を意識するようになったのは、作品というよりも、評論集 Dan Graham, _Rock My Religion_ (MIT Press, ISBN0-262-07147-9, 1994, Book) でだったのだけれど。去年の11月に Dia Chelsea, New York の屋上の作品を 観るまで、_Rock My Religion_ に載った写真で見ていたくらいだった。 ハーフミラーを使って部屋を2つに区切った _Public Space / Two Audiences_ (1976) など面白そう、と思っていたが。ハーフミラーを多用したパビリオンと 呼ばれる一連の作品は、写真で観てるだけではよくわからないだけに、 こうして作品を体験できただけでも、とても面白い展覧会だった。 しかし、Dia Chelsea の屋上の展示も、僕が観たときは天気が良くて明るかった せいか、あまりハーフミラーの効果がよく出てなかったように思った。そういう こともあって、ひょっとしてコンセプト止まりの人かも、と思っていたのも確かだ。 1976年の La Biennale di Venezia に出展された _Public Space / Two Audiences_ も今回の展覧会で再現されていたが、確かに、実際に部屋に入ってみても、 一面の壁にミラーを填めた部屋とそうでない部屋の非対称性がよく考えられて いるとは思ったが、あまり部屋に客が入っていなかったせいか、面白く体感できた、 というほどではなかった。 しかし、_Triangle Solid with Circular Inserts (Variation E)_ (1997) では とても楽しめた。これは三角柱状にミラーとハーフミラーを組み合わせた作品だ。 一面はハーフミラーで丸くミラーが填められている。もう一面はミラーに丸く ハーフミラーが填められている。さらに一面はハーフミラーに丸く穴が開け られており、そこから三角柱の内に入れるようになっている。ちょうど光加減が 良い時間帯だったのかもしれないが、これが、見た目かなりトリッキーだ。 最初、思わず丸いハーフミラーから手を入れようとしてしまったほどだ。三角柱の 中から出たときも、外から見ていた客が「あ、そこから入れるんだ」と言って いたのも面白かった。こういう感じで、ハーフミラーなどを挟んで内外に人が ある程度いて、相手の反応が見られる方が、その関係性の面白さが際立つだろう。 ハーフミラー、ミラー、有孔ステンレスパネルを使ったパビリオンの展示全てで そういう面白さが体験できたわけではないが。「あ、そこから入れるんだ」と いう他の客の反応が見られただけでも、千葉まで足を運んだ甲斐があったと思う。 コンセプトだけでなくそれが体感できるレベルの作品になっていると実感できた ように思う。 ただ、初期のコンセプチャルな作品は、こういったパビリオンの作品があるからこそ、 そのアイデアの初期の姿を知ることができるという意味で興味深いという程度 かもしれない。ただ、詩のデータ構造を記述した _Schema_ (1967) (「概要」と 訳されていたけど、まさに「スキーマ」とした方が適切のような……) のような、 ディティールがツボにハマった作品はあったが。 sources: _Dan Graham by Dan Graham_ 展サイト, http://www.ccma-net.jp/dg/index.html Dan Graham, _Rock My Religion_ レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/98010201 2004/01/25 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/