水と油 『スケジュール』 世田谷パブリックシアターシアタートラム (三軒茶屋), http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ 2004/06/18, 19:30-21:00 - 水と油: じゅんじゅん (高橋 淳), ももこん (藤田 桃子), おのでらん (小野寺 修二), すがぽん (須賀 玲奈). 2003年の第2回朝日舞台芸術賞「寺山修司賞」受賞を記念しての日本ツアーの 皮切りとして、『スケジュール』 (2002年初演) の再演が、シアタートラムで 行なわれている。6/17〜27の10公演のロングランだ。 『スケジュール』の初演は観ておらず、今回初めて観たのだが。動きの面白さ はもちろん、男性はグレーの三つ揃え (ただしジャケットはほとんど使わない)、 女性は黒のワンピースという衣装、皮の鞄などの小道具の使い方まで、他の 作品同様に彼等の世界だった。 この作品のハイライトは、座面の方向を90度違えて組み合わせた椅子を中心に 展開する場面だろう。この座面にパフォーマーが座り、その椅子と向きを 合わせた小机やそれを巡る動きを展開することによって、直交する2つの重力 方向とその相互作用を表現していくのが面白い。2つの椅子が絡み合っている ように、異なる重力が働く空間が複雑に絡み合っているのが、とてもシュールな 印象を与えていて面白いのだ。それに、この直交する2つの重力が働く空間は、 パフォーマンスが進むに連れて、回転し傾き移動していくのだ。この動きの 存在もとても面白かった。 もちろん、この移動する2つの重力が働く空間、という状況に説得力を持たせて いるのは、彼等のマイムの身体能力だ。他の作品にも言えることだが、彼等の 作品の魅力の一つは、マイム的な身体能力に支えられた、様々な重力方向の表現、 身体の動きによる空間の分節化と、分節化された他空間との相互作用や空間の 変型流動の表現、だと思う。 このような空間的な表現の他に、彼等は時間的な表現 ―― スローモーション から早回しまで異なる時間の流れの表現をしようとしている。ただ、スロー モーションの方はいいとして、速い動きが少々ひっかかるのだ。特に、舞台を 走りまわるようなシーンが、ドタドタと重く走っているような感になるところが、 僕にはひっかかる。それが、水と油 の時間表現が僕にはいまいち魅力的に 感じられないところだ。コンテンポラリーダンスのダンサーが見せる重力を 感じさせない軽い走り (連想した最近観ものだと、Compagnie Maguy Marin / Centre Choregraphique National de Rillieux-la-Pape _Les Applaudissements Ne Se Mangent Pas_ (世田谷パブリックシアター, 2003)) だったら、とも思う。 その一方で、そういうコンテンポラリーダンス的な動きが可能になったら、 水と油 らしくなくなってしまいつまらなくなりそうな気もするので、むしろ この重い走りを生かした表現にした方がいいのかもしれない。 もちろん、このような時空の変容させるような身体の動きの面白さだけでなく、 4人のキャラ立ちの良さと、キャラ立ちの良さと身体の動きの良さに支えられた ユーモアも 水と油 の魅力だ。それが、彼等の舞台を様々な客層に対して敷居 の低い親しみやすいものにしているように思う。 sources: 水と油, http://www.mizutoabura.com/ 2004/06/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/