篠崎 史紀 with 水と油 『MARO World Vol.2 "MOZART"』 王子ホール (銀座), http://www.ojihall.com/ 2004/10/30, 19:00-21:00 - 篠崎 史紀 (violin), 伝田 正秀 (violin), 鈴木 康浩 (viola), 伝田 正則 (cello), 市川 雅典 (contrabass), 阿部 麿 (horn), 猶井 正幸 (horn); 水と油 (mime): 小野寺 修二 (おのでらん), 藤田 桃子 (ももこん), 高橋 淳 (じゅんじゅん), 須賀 玲奈 (すがぽん). NHK交響楽団第一コンサートマスターである 篠崎 史紀 をフィーチャーした 室内楽のコンサートシリーズに、マイムカンパニー 水と油 が参加した。 室内楽の演奏というより 水と油 がどのように絡むのかという興味があって 観てきた。全体としては室内楽のステージへの闖入者という感じの出来で、 オリジナルな作品を観たという感じでは無かったが、軽く楽しめた舞台だった。 水と油 のパフォーマンスの観点からレビューを。 会場が王子ホールということである程度予想していたが、ステージは室内楽用の 小さなもので、弦楽五重奏団が乗っただけでそれなりにいっぱいで、走りまわる ような動きをする場所は取れない。演奏を邪魔するような大きな物音は立てない ように意識していることもあってか、スローな動きを中心とした構成だった。 僕が彼等の舞台の最も好きな点は、複雑に絡み合う異なる重力が働く空間を 身体を使って描く所なのだが、会場も制約もあってほどんと出来ていなかった のは残念だった。 それでも前半の A. Mozart, "Music for Pantomime "Pantalone and Colombine" K.446" (1783) では、机や椅子を使って、普段の舞台でやっていることに近い 動きをしていた。それでも、空間を変容させるような大きな動きが出来ないため、 無声コメディに近くなっていたように思う。彼等のコミカルな部分も好きなので それでも楽しめたが。 ちなみに、演奏された曲はもともと mime のために作曲されたものだが、 タイトルからして、コメディア・デラルテ (commedia dell'arte) だ。 おのでらん が Pantalone (鉤鼻の老人) を、ももこんが Colombine (小間使いの女性) を (すがぽん は Arlecchino あたりか?) を意識した動き でもするかな、と期待した所もあったのだが。残念ながら、そういう演出は 無かった。コメディア・デラルテのストックキャラクターに縛られることも ないとは思うが、そういう点を意識したパフォーマンスを少し入れても 良かったのではないかとも思う。 彼等の魅力のもう一点は、動きによって舞台上の空間を分節化し、さらに それを接続させることによって生じるシュールさだと思っている。この点に ついては、前半だけでなく、後半の A. Mozart, "Divertimento No.17 in D major K.334" (1780) も含め、この舞台ではかなり頑張っていたの ではないかと思う。演奏者のいる空間とパフォーマーのいる空間は密接して 入り組んでいるとはいえ、基本的に独立しているのだが、それが繋がる時が 笑いを生んでいたように思う。これについては、ミュージシャンの動きが 良かったということも大きかったと思うが。 こういう試みを起点に、ミュージシャンによる生演奏付きの舞台作品に 取り組んでいくと、水と油 ももっと面白くなるのではないかと思う。 source: 水と油, http://www.mizutoabura.com/ 2004/10/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/