Rosas, _Bitches Brew / Tacoma Narrows_ 彩の国さいたま芸術劇場大ホール (与野本町), http://www.saf.or.jp/ . 2005/04/10, 15:00-16:30. - Choreography: Anne Teresa De Keersmaeker - Premiere: Kaaitheater, Brussels, 2003/06/18. - Dancers: Benjamin Boar, Marta Coronado, Fumiyo Ikeda, Cynthia Loemij, Elizaveta Penkova, Salva Sanchis, 社本 多加, Igor Shyshko, Clinton Stringer, Giulia Sugranyes, Kaya Kolodziejzyk, Johan Thelander, Rosalba Torres Guerrero, Jakub Truszkowski. - Music: "Bitches Brew", "Spanish Key", "Sanctuary", "Miles Runs The Voodoo Down" (Miles Davis, _Bitches Brew_, 1969), etc. ベルギーのダンスカンパニー Rosas の新作は electric Miles Davis の名作 _Bitches Brew_ (1969) で踊るというもの。最近の日本公演では、Steve Reich の音楽を使って幾何的なマスゲームのような展開を見せることが多かったが、 この作品ではそのような構成が排されていたせいか、むしろ、個々のダンサーの 踊りが楽しめたように思う。 今回の舞台で最も印象に残ったのは、ソロをとることが最も多くこの作品の 主役相当の Marta Coronado。小柄でダンサーにしては丸みを感じる体形のなのだが、 _Bitches Brew_ の funk のビートに乗って踊る様子は、ストリートダンスの イデオムを入れていたこともありゴム掬が変化しながら跳ね転がるような感じで、 とても面白かった。表情作りも可愛らしく、彼女が踊っているのを観ているだけで 飽きなかった。マスゲーム的な動きを多様した作品では、大柄なダンサーの方が 印象に残りやすかっただけに、Coronado のような小柄なダンサーに目が行った 今回の作品は、今までの Rosas とかなり違うように感じた。 男性ダンサーも、DJ役も兼ねた Salva Sanchis もファンキーなキャラクターが 立っていたし、細身長身の Igor Shyshko も Coronado と組んだときの体形の 対比が生きていたように思う。 個々のダンサーが目立っていた一方、演出はむしろ凡庸だったように思う。 上手下手舞台奥の三方のどこからも出入り可能な奥行きを使った正方形の舞台 を使っていたのだが、どこからでも出入り可能ならではでの、意外な出入りが 無かったように思う。同様の舞台なら、意外な出入りを演出した Compagnie Maguy Marin, _Les Applaudissements Ne Se Mangent Pas_ (2002) の方が巧く使っていたように思う。 DJまでは使わなかったものの、レコードをかけながら踊るという点では、 Anne Teresa De Keersmaeker のソロ _Once_ (2002) とも共通するが、 _Once_ の方が Joan Baez, _In Concert Part 2_ の音楽の必然を強く感じられた。 今回の作品でも確かに _Bitches Brew_ を大きな音で聴くよさはあったが、 _A Tribute To Jack Johnson_ (1969) でも _Live-Evil_ (1970) でも代替可能に 感じられてしまった。これは、ダンスの構成のせいではなく、単純に音楽が歌物か そうでないかという問題のようにも思うが。途中の映像投影の演出に必然を 感じないのは、_Once_ も _Bitches Brew / Tacoma Narrows_ も一緒だ。 正直演出の面では物足りなさを感じたが、今までダンサーの個性を強く意識させ られなかっただけに、Marta Coronado のような魅力的なダンサーに気付くことが 出来たのは収穫だったように思う。 sources: Rosas, http://www.rosas.be/ 2005/04/10 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html