タムラサトル 『Weight Scruptures 2』 Gallery Q, Gallery Q, http://www.mercury.sannet.ne.jp/galleryq/ 中央区銀座1-15-7 Mac Bldg 2F, tel.03-3535-2524. 2005/4/11-16, 11:00-19:00 (最終日11:00-17:00) タムラ サトル は、巨大な鰐の彫刻が回転する『スピンクロコダイル』 (1994) や、 プロペラを付けた巨大な熊の彫刻がファンの風圧で轟音を立ててレール上の移動する 『Standing Bears Go Back』 (1999) のような立体作品を作ってきた作家だ。 今回展示されていた最近のシリーズ『Weight Scrupture』は、3〜4桁の精度で ぴったりの重さの彫刻を作るシリーズだ。 彫刻の素材は既成の金属の置物やフィギュア、プラモデル、ゴム人形だ。その元の 重さの2桁目以下を四捨五入した重さになるように、削ったり分銅を載せたりした ものが、作品だ。彫刻の台座として重量計が使われており、彫刻がぴったりの重さを 持っていることを示している。 最も面白いのは、やはり、金属の置物やフィギュアを用いたもの。重量を減らすために 蜂の巣状に穴が開けられたり分銅が載せられたりしている様は異様だが、穴を開ける 場所や分銅を置く場所の選び方にユーモアのセンスが感じられる。 それに比べて、プラモデルのパーツを調整することによって重量を調整した作品は、 形状が単なる未完成という感じで異様さやユーモアが感じられず、物足りない。 むしろ、ゴム人形を沢山集めてぴったりの重さにした作品の方が、グロテスクな 見た目になっていて良かったように思う。 また彫刻だけでなく、同様のコンセプトで自分の体を使ったパフォーマンスを 収めたビデオを展示していた。そのパフォーマンスとは、あらかじめ 100kg 近く まで体重を増やしておき、全裸で体重計に乗り、烏龍茶を飲むことで自分の体重を 100kg ちょうどするというものだ。 タムラサトルは、一貫してアンチコンセプチャルな作品を作っている。初期の 『スピンクロコダイル』のような作品は、コンセプトの社会的無意味さによって、 身体感覚に直接訴える圧倒的な存在感、そして形状選択のユーモアを際立たせていた。 その後の『バタバタ音をたてる2枚の布』(2000) のような作品は、形状をミニマル にすることによって、圧倒的な存在感だけを際立たせていた。その作品の、 一度コンセプチャルを通過したあとのモダニズムのような所も気に入っていた。 『Weight Scrupture』は、『バタバタ音をたてる2枚の布』とは反対の方向性を 持っており、圧倒的な存在感の方を無くすることによってユーモアを際立たせて いるとも言える。 しかし、一連の作品を観ていると、面白いと思う一方、身体感覚に直接訴える ような所が無い分だけ、アンチコンセプチャルであることがコンセプトになって しまっているような危うさを感じるところもあったのも確かだ。 sources: タムラサトル, http://www.lares.dti.ne.jp/~mm25/tamura/index.html 2005/04/16 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html