Schaubuehne am Lehniner Platz, Berlin, _Nora_ (2003) 世田谷パブリックシアター, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ 2005/06/18, 14:00-16:20 - Direction: Thomas Ostermeier. Written by Henrik Ibsen. German by Hinrich Schmidt-Henkel. - Joerg Hartmann (Rechtsanwalt Helmer), Anne Tismer (Nora), Lars Eidinger (Dr. Rank), Jenny Schily (Frau Linde), Kay Nartholomaeus Schulze (Rechtsanwalt Krogstad), etc. Schaubuehne は1962年にドイツはベルリン (Berlin, Germany) に設立された 現代演劇のカンパニーだ。創設メンバーに Wim Wenders, _Der Himmel ueber Berlin_ (『ベルリン天使の詩』, 1987) で天使 Damiel を演じた Bruno Ganz がいた劇団 としても知られる。といっても、観たのは初めてだ。 斬新と感じるほど凄い演出を楽しめたわけではないが、普通に洗練された舞台を 楽しむことができたように思う。 今回観た _Nora_ は、『人形の家』 (Henrik Ibsen, _Et Dukkehjem_, 1879) を 原作とし、舞台を現代へ、19世紀のブルジョワを現在のビジネスエリートへ 置き換えた作品だ。そういう点で、どう現代的な解釈を入れ込んでいるのかが、 一番の興味だった。 最も意外だったのは結末を除いて、セリフのレベルでほとんど原作に忠実だったこと。 結末以外で変えられていると気付いた点は、タランテッラで踊るという設定が SF映画のヒロインのコスプレ踊るという設定に変えられていた点と、セリフを 用いないいくつかの性的な描写が付け加えられていた点だ。100年以上前に書かれた 『人形の家』の扱う問題は、大枠において充分現代においてもアクチュアルな面が あるのだと感慨深かった。(原作では Dr. Rank が罹っている病気が梅毒を暗示 させるものだったのだが、AIDSに置き換えられていたようだ。しかし、原作を 読んでも梅毒の暗示とは判らなかったので、その置き換えについても判らなかった。) 大筋で原作に忠実だっただけに、結末の書き換えが最も興味深かった。原作では 夫と子供を捨てて家を出て行くのだが、Schaubuehne 版では、夫をピストルで 射殺=処刑するのだ。確かに、原作が書かれた19世紀末欧州のブルジョワ社会では、 妻が家を出て行くというだけで大スキャンダルだっただろうが、現代では離婚は よくあることであり、議論を引き起こすようなインパクトは無い。そういう意味で、 射殺という結末を持ってくるのは判らないではないが、極端過ぎてリアリティを 失ってしまったというか、変にドラマチックになってしまったようにも感じた。 セリフはドイツ語だったが、ある程度は知っている基本的なドイツ語彙を手がかりに、 ほとんど字幕に頼らずに楽しめたように思う。あらかじめ原作の日本語訳 (岩波文庫版) を読んでいったこともあるが、セリフだけでなく俳優の動作が充分に描写している ようにも感じられた。Nora 役の Anne Tismel をはじめ、俳優の身のこなしがとても きれいで、激しく踊るようなシーンでもバタバタとした感じにならないのが良かった。 舞台装置は、抽象化を行わず、モダンな高級住宅の室内を作りこんだ一杯道具。 舞台の具体的な部分を演技やライティングで補うようなトリッキーなことをあまり 行っていなかったこともあり、演出は比較的普通のものだったように感じた。 洗練はされているけれど、日本のメジャーな小劇場演劇と方向性は変わらない ようにも感じた。このような舞台作りは、Helmer 邸のみを舞台とした作品だという こともあると思うが、『人形の家』の抽象的な本質を引き出すというより現代社会に おけるアクチュアリティを問うという感じの演出と関係あるようにも感じた。 ただし、一杯道具とはいえ、舞台を回転させ正面を変化させることにより、 舞台の単調さを排していたようには思う。 sources: Schaubuehne am Lehniner Platz, Berlin, http://www.schaubuehne.de/ 2005/06/19 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html