『ローザスとアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの二十五年』 _Rosas XXV 1980-2005_ 東京都写真美術館, http://www.syabi.com/ 目黒区三田1-13-3 (恵比寿), tel.03-3280-0033. 2005/10/01-30 (月休;10/10開;10/11休), 10:00-18:00 (木金10:00-20:00). Anne Teresa De Keersmaeker 率いるベルギー (Belguim) のダンス・カンパニー _Rosas_ の25年間の活動を振り返る展覧会だ。2002年から2003年にかけて ブリュッセル (Brussels) の Palais des Beaux-Arts, Paleis voor Schone Kunsten で開催された _Rosas XX_ からの抜粋再構成とでもいう内容だが、ミニマル (必要最低限) のスッキリした展示で、彼女らのダンスのエッセンスは判り易い形で 提示されていたように思う。 もともと派手な舞台装置や衣裳を使うカンパニーではないが、その手の資料の 展示は入口にさりげなく置いてあるだけだ。25年の活動を振り返るものは、 1980年代初頭から至る舞台やリハーサルの様子を捉えた Herman Sorgeloos による 一連のモノクロ写真が並ぶだけだ。実際の舞台ではきちんと認識できないことも 多いし空中姿勢や倒れかけの姿勢を捉えた写真などは美しいとは思うけれども、 やはり舞台の方が生きていると思う。 むしろ、彼女らの舞台のエッセンスを知るという点では、Thierry De May の 映像作品 _Violin Phase / Top Shot_ (2001) を使ったインスタレーションと、 映像ブースで上映されている Aliocha Van Der Avoort, _Vocabularium_ (2002) だろう。それも、この2作品がマクロ (位置取り) とミクロ (動き) で相補する 関係にあるのが良かった。 _Violin Phase / Top Shot_ は、Keersmeaker 自身が踊る _Violin Phases_ を頭上から垂直に見下ろす視線で捉えることにより、Rosas の好む幾何的な 位置取りを巧く視覚化した映像だ。床には砂が敷き詰められており、ステップの 跡が砂に刻まれていく。その結果として生まれる図形は、円周とそれを八等分する 直径方向の線なのだ。インスタレーションとしては、映像のカメラの視線方向に 合わせて、天井から砂を敷き詰めた床に投影するように なっていた。 一方、_Vocabularium_ は、フォーメーションではなく、個々の動きの語彙を 集積した映像だ。Rosas のダンサー Cynthia Loemij が、Rosas のダンスで 用いられているダンスの語彙というか動きの単位を、一つ一つ見せていくもの。 背景は黒で衣裳もシンプル、繋ぎも単純に並べたもので、物語性が排された 作りというのが良い。 しかし、_Once_ (2002) や _Bitches Brew / Tacoma Narrows_ (2003) のような 最近の Rosas の作品は、この展覧会で示された Rosas から逸脱しつつある。 _Rosas XX_ が2002-03年に開催されたことを考えると、これで今までのやり方に 一段落付けたのだろうか、とも思ってしまった。 _Rosas XX_ の内容を全て持ってくることができなかったのは残念だが、 シンプルでモノクロームに抑えられた展示の雰囲気といい、気の良い展覧会に 仕上っていたと思う。 sources: Rosas, http://www.rosas.be/ 『ローザスとアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの二十五年』 展覧会ウェブページ, http://www.syabi.com/schedule/details/rosa.html _Rosas XX_ 展ホームページ, http://www.rosas.be/Rosas/XX_intro.html 2005/10/02 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html