『宮殿とモスクの至宝 ― V&A美術館所蔵イスラム美術展』 _Palace And Mosque: Islamic Art from the Victoria and Albert Museum_ 世田谷美術館, http://www.setagayaartmuseum.or.jp/ 2005/10/01-12/04, 月休 (祝開, 翌休), 10:00-18:00 V&A (Victoria & Albert) Museum の Islamic Middle East Gallery の改装に 伴い企画された国際巡回展の日本での展覧会だ。第一印象は「オリエンタリズム」。 とていっても、あまり知らない分野なだけに興味深く、とても勉強になった 展覧会だった。 よく見かける飾り窓のような模様はミフラーブ (Mihrab) 文ということ、 中国磁器を真似てフリットウェアという白い陶器が作られていたこと、 ペルシャ文学の古典『ホスローとシーリーン』 (_Khosrow o Shirin_) の話とか、 イスラム圏出身の現代のアーティストやミュージシャンの作品の中で気に なっていたことのルーツを知ることができたことが、収穫だった。 人物像動物像が排されたため、草木模様とアラビア文字装飾が発達した、 という予備知識はあったのだが、その実際は多様。オスマン朝 (トルコ) では厳格に人物像動物像を排した一方で、サファヴィー朝 (イラン) では 人物像を描いた絵が残っているということに、イスラムの多様性の一面を 見たように思った。また、イスラム関連だけでなく関連する アルメニア (正教会) 関連の資料がそれなりの数見ることができた。 その一方で、ユダヤ (教) 関連の資料が全く無かったのが意外だった。 あと、「イスラムと中国、ヨーロッパの美術交流」の展示に文化の交流拡散が 感じられだ。特に興味を引いたのは、ヴェネト・サラセン様式 (Veneto-Saracenic) と呼ばれるヨーロッパ北ドイツ製の金属器にイスラム圏で象嵌を施した イスラム=ヨーロッパ折衷の様式。展示では制作地は象嵌を施した場所が表示 されていたが、単純にそう言い切れない文化の重層を感じた。 この展覧会はいろいろ見所があると思うが、その一つは15世紀マルムーク朝 (エジプト) の「スルターン・カーイトバーイのミンバル (説教台)」 (Minbar for Sultan Qaitbay)。高さ7mもあるもので、よくぞ日本に持って こられたものだ、と思う。大きさ的なインパクトとしては、今年観た中では やはり V&A 巡回展の『アール・デコ展』での Strand Palace Hotel, London のエントランス復元模型に匹敵した。V&A はこういうのが好きなんだろうか。 sources: Palace And Mosque: Islamic Art from the Victoria and Albert Museum, @ V&A (Victoria & Albert) Museum http://www.vam.ac.uk/collections/asia/islamic_gall/touring_exhib/index.html 『アールデコ展』 (_Art Deco 1910-1939_) @ 東京都美術館 レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/DoH/05042901 2005/11/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕