李 禹煥 『余白の芸術』 Lee Ufan, _The Art Of Margins_ 横浜美術館, http://www.art-museum.city.yokohama.jp/ 横浜市西区みなとみらい3-4-1 (みなとみらい, 桜木町), tel.045-221-0320. 2005/9/17-12/23 (木休;11/3開;11/4休), 10:00-18:00 (金 -20:00). 韓国生まれながら1960年代から日本で活動する作家の、1990年代以降の作品に 焦点を当てた展覧会だ。もともと、もの派 と呼ばれるような作風の立体作品や、 キャンバスに大きな刷毛状の筆で入り抜きのある線や点を配置するような作品を 作ってきた作家だ。この展覧会では、作風がますますミニマルになった作品が 楽しめる。 キャンバスに描く平面作品も、以前のように画面に多くの点や線を配置することなく、 特に2000年代に入ってからは、多くてせいぜい2〜3点だ。さらに、紺や金のような 色も用いず白黒のモノトーン。そのため、点や線の配置というよりも、描かれた点の 入り抜きや、筆の作り出すテクスチャ、濃淡の傾斜などが際立つようになっている。 点の配置が作り出すリズム感のようなものは、一枚のキャンバスの中でではなく、 同じサイズのキャンバスの作品の複数併置によって作り出していた。 そして、キャンパスに1点しか描かかず、キャンパス内という中立の平面の中で 描かれた線や点が作り出す関係というよりも、描かれた点自体のテクスチャを 際立たせた先にあるのは、最後の展示室での作品におけるキャンパスの消失 ― つまり、展示室の壁に直接描くというものだ。つまり、点そのものだけが観賞の 対象になるといった具合だ。 しかし、キャンバスが消失したおかげで、中立のキャンバス内ではなく、展示空間に おける点の位置が表に出てくる感もあり、立体作品との連続性も感じられるように なったのも興味深かった。 ぶ厚い工業用鉄板や鉄棒、直径50cm近くある自然の石を配した立体作品も、展示空間 から中立な石と鉄板の位置関係から、展示空間内における位置というように変わって 来ているように思われた。とくに、従来寝かせて置かれることが多かった鉄板が 立ち上り、視界を遮るくらいの高さで展示空間を区分するような立体作品が、 特徴的だろう。 相互関係的な配置と点や物それ自体のテクスチャ感の間の綱引きから、テクスチャ 感と展示空間との綱引きに、テンションの位置が変わったのかな、と感じさせた 所が面白く感じられた展覧会だった。 2005/12/24 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html