『スイス現代美術 リアルワールド―現実世界』 _Talking About The Real World: Contemporary Swiss Art_ 千葉市美術館, http://www.city.chiba.jp/art/ 千葉市中央区中央3-10-8, tel.043-221-2311. 2005/12/17-2006/02/26 (月休,1/9開,1/10休,12/29-1/3休), 10:00-18:00 (金-20:00). - Sylvie Fleury, Fabrice Gygi, Frederic Moser & Philippe Schwinger, Shahryar Nashat, Ugo Rondinone. スイスはジュネーヴ (Geneve, CH) の MAMCO (Musee d'Art Moderne et Contemporain) の監修によるスイスの現代美術の展覧会は、その展開を辿るような内容ではなく、 同時代的な5人の作家にそれぞれ別に区分けしたギャラリーを割り当てた5本立ての 個展とでもいう内容だった。もちろん、現実世界の社会機構の可視化とでもいう 感じの、テーマに緩い統一感はあったように思うが。特に印象に残った作家のみ コメントを。 最も印象に残ったのは、Fabrice Gygi のギャラリー。グレーの防水シートを キャンバスに仕立てた作品が壁を飾り、部屋の片隅にはグレーのミニマルな装飾と 形状の軍用テント。天井からは大きなクレーンの釣具のようなものがぶら 下がっている。そして、中央に赤く巨大な緊急脱出用エアバックが膨らんでおり、 エアコンプレッサーが大きな音を立てているのが、不穏な雰囲気を醸し出している。 会場が同じということもあり、『ミニマル マキシマル ― ミニマルアートとその展開』 (_Minimal Maximal - Minimal Art and its influence on international art of the 1990s_, 千葉市美術館, 2001) の展覧会を思い出してしまった。Ikea の 家具を使った Christian Philipp Mueller, _Neue Arbeit aus Ikeamoeeln_ (1998) とも似た発想の作品だが、既製品とはいえ用途が軍用や非常用ゆえにミニマルな ものであるせいか、すっきりモダンというより装飾の無さににそこはかとない 不気味さが感じられるのが興味深かった。単にエアコンプレッサの音の効果のせい かもしれないが。 Sylvie Fleury のクロームメッキしたチューンナップカー用エンジン、塗装パターン を壁面に描いた作品も、既製品ベースの作品だが、装飾的な悪趣味さを切り出す ところを狙ったのかもしれないが、その切り出し方がミニマムな感じなので、 むしろ、少し過剰な感じの方が面白かったかもしれないとも思った。 『スイス・ヴィデオランドスケープ・トゥデイ』 _Swiss Video Landscapes Today_ presented by VIPER International Film Video And New Media, Basel. - 1)Max Philipp Schmid, _Black Milk_ (2002) 2)Zilla Leutenegger, _Quicksilver (2002) 3)Zilla Leutenegger, _Peak_ (2001) 4)Thomas Galler, _Murder_ (2002) 5)Cornelia Heusser, _Sitzungszimmer des Friedensrichters_ (2001) 6)Claudia Schmid, _Zwischen Jetzt Und Spaeter_ (2002) 7)Zilla Leutenegger, _Blow Job_ (2001) 8)Nicolas Party, _Arbres_ (2003) 9)Annelies Strba, _Frances Und Die Elfen_ (2005) 10)Zilla Leutenegger, _Mamoru_ (2001) 11)collectif_fact, _Bubblecars_ (2004) 12)Cristophe Oertli, _Plan Fixe_ (2003) 13)Pipilotti Rist, _I'm Victim Of This Song_ (1995) 展覧会に合わせてビデオ上映会も企画されている。VIPER International 提供に よるもので、内容は『イメージ・フォーラム・フェスティバル 2005』のプログラム _Swiss Video Landscapes Today: Loopes Sensations_ を、この展覧会に合わせて 再構成したもの。これについても、印象に残ったもののみ。 最も面白かったのは、Claudia Schmid, _Zwischen Jetzt Und Spaeter_ (2002)。 器械体操をする女性の映像を、Marcel Duchamp, _Nude Descending A Staircase_ (1912) よろしくスチルに展開し、それをクロースアップで舐めていくような形で 改めて動画にすることにより、その動きを表現していた所が、特に面白かった。 collectif_fact, _Bubblecars_ (2004) はCG作品だが、飛び飛びに街灯で浮かび 上がる車道が奧から手前に描かれいるところに、たくさんの自動車が奧からやって くる。しかし、走ってくるのではなく、まるで泡のように宙を舞ながら飛んで くるのだ。一発芸だとは思うが、ちょっと不気味なシュールさも笑える作品だった。 Pipilotti Rist, _I'm Victim Of This Song_ (1995) は、何回か観たことのある、 好きな作品。ミュージックビデオ的な作品だが、映像が良いというよりも、本人と Anders Guggisberg によって調子外れに歌われる Chris Issac, "Wicked Games" がとても不穏でかっこ良いので救われていると、つくづく思った。 Zilla Leutenegger は、4作出しているのだが、作風はいろいろ。簡素な線描画を 針金細工のように三次元に取り出してそこに腰かけたりぶら下がったりする女性 (作家自身?) を合成した _Peak_ (2001) など、シンプルな手法と軽い遊び心が 良いと思ったが、他の作品はピンとこなかった。アニメ映画版の『攻殻機動隊』 (_Ghosts In The Shell_, 1995) のセリフ音声をそのままに、映像をアテレコした _Mamoru_ (2001) なんていう作品もあった。 sources: MAMCO (Musee d'Art Moderne et Contemporain), Geneve, http://www.mamco.ch/ VIPER International Film Video And New Media, Basel, http://www.viper.ch/ _Swiss Video Landscapes Today: Loopes Sensations_, http://www.viper.ch/viper/content/main.php?id=28KD2B 2006/01/09 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html