『転換期の作法: ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術』 _Positioning - In the New Reality of Europe: Art from Poland, the Czech Republic, Slovakia and Hungary_ 東京都現代美術館 2006/1/21-3/26, 10:00-18:00 - Poland: Pawel Althamer, Azorro (Oskar Dawicki, Igor Krenz, Wojciech Niedzielko, Lukasz Skapski), Miroslaw Balka, Artur Zmijewski; Czech rep.: Kristof Kintera, Mila Preslova; Slovakia: Pavlina Fichta Cierna, Ilona Nemeth; Hungary: Antal Lakner, Agnes Szepfalvi, Csaba Nemes. 『2005年日・EU市民交流年』の一環で企画された、国立国際美術館、広島市現代 美術館、東京都現代美術館と巡回している中東欧4ヶ国の東欧革命後の現代美術を 紹介するグループ展だ。明らかに社会的な (特にアイデンティティ・ポリティクスの) テーマの方に重点が置かれた企画だった。題材から地域性を読み取れるものの、 その作風には地域性のようなものはほとんど感じられなかった。ビデオを使った 作品が多かったが、特にこの地域に限らずに言えることだとも思う。企画全体 としては普通のショーケースといった所だろう。印象に残った作品について、 以下にコメント。 最も印象に残ったのは、Mila Preslova の写真作品。例えば、_Housewife_ (2001) は自分が扮した主婦像を撮った写真だ。そのジェンダーに対する諷刺性というより、 表情や姿勢を作り込まなず背景を白抜きにしたミニマルさが、例えば Cindy Sharman のグロテスクな写真と正反対の方向性があって、興味深かった。 アイデンティティ・ポリティスク物としては、Pavlina Fichta Cierna による スロヴァキアの貧しいロマの姉弟を捉えたビデオ作品 _Maloljetni David R._ (2004) と _Jarka Izmedu_ (2004) や、イスラエルはテルアヴィヴ (Tel Aviv, Israel) の 養老院にポーランド系のユダヤ人の人達を訪ね幼い/若い頃に覚えたポーランドの 歌を思い出してもらう様子を捉えたビデオ作品 Artur Zmijewski _Our Songbook (Nasz Spiewnik)_ (2003) を興味深く観ることができた。しかし、ドキュメンタリ 映画としてもっと普通に作った方が良い内容だとも思ったし、現代美術のビデオ作品 という形式の必然性がいまいち感じられなかったのも確かだ。 そんな作品に混じってとぼけた面白みを醸し出していたのが、Azorro のビデオ作品。 現代美術の制度に対する言及を主題にしたビデオ作品で、それだけ観たら否定的な 印象が強かったかもしれないが、多くの社会的な作品に挟まって展示されることに より、前後の作品を異化して企画全体を締めていたように感じた。特に気に入ったのは _Everything Has Been Done - I_ (2003) と _Everything Has Been Done - II_ (2003)。次の作品のネタ出しをする Azorro の4人取った淡々と撮った作品だが、 野外のロケーションといい4人の様子といい、妙にのんびりした感じ。で、アイデアを 出す度に「それは観たことある」とダメ出しするという。またそのアイデアの中には、 念頭に入れている現代美術の作品が想像付くものもあって、それが脱力感ある諷刺に なっていて可笑しかった。残念なのはI、II併せて38分という長さだということ。 _Monty Python's Fying Circus_ のスケッチくらいの長さだったら良かったのに、 とも観ていて思った。 ユーモアを感じた作品としては、Antal Lakner による Iners ブランドでの _Passive Work Devices_ シリーズ。ネコ車押しや壁のペンキ塗りといった、 通常の労働行為を模したトレーニングツール (それぞれ _Home Transporter_ (2001) と _Home Transporter_ (2001) は、それを対比した広告風のポスターも秀逸だし、 トレーニングマシーンとして実際に体験できるように展示されているのも、 イメージアイデア止まりではなくて良いと思った。 sources: 東京都現代美術館, http://www.mot-art-museum.jp/ 『転換期の作法』 @ 東京都現代美術館, http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/4/ 2006/03/11 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html