Deutsches Theater Berlin _Emilia Galotti_ 彩の国さいたま芸術劇場大ホール 2006/03/19, 15:10-16:25. - Directed by Michael Thalheimer. Written by Gotthold Ephraim Lessing. - premier: 2001/9/27. - Regine Zimmermann (Emilia Galotti), Peter Pagel (Odoardo), Katrin Klein (Claudia), Sven Lehmann (Hettore Gonzaga, Prinz von Guastalla), Ingo Huelsmann (Marinelli, Kammerherr des Prinzen), Henning Vogt (Graf Appiani), Nina Hoss (Graefin Orsina). - Music: Bert Wrede based on "Yumeji's Theme" by Sieru Umebayashi ("In The Mood Of Love"). Deutsches Theater Berlin は、1850年にでき冷戦時代は東ベルリンにあった 劇場だ。その劇場のカンパニーによる来日公演は、18世紀ドイツ啓蒙主義の戯曲 _Emilia Galotti_ (G. E. Lessing, 1772) をドイツ人演出家 Thalheimer が 演出したもの。ミニマルな切り詰め方も冴えた演出が、実にかっこいい舞台だった。 特にセリフを抑えた演出は、演劇は身体表現だなぁとつくづく感じるものだった。 登場人物を現代に置き換えることなく、使われたセリフも原作のものをほぼそのまま 使っているようだったが、量がかなり削られているのだ。例えば、原作は全5幕なの だが、そのうち第1幕は完全に削られていた。かといって、第1幕に相当する部分が 無かったわけではない。その代わりに、公爵 (Hettore Gonzaga) が Emilia を 見初めるシーンが無言のまま展開するのだ。ポイントとなるセリフを最小限押さえ、 あとは俳優の身振りと舞台上の立ち位置で物語っていく所が、シャープに感じられ とても気に入った。また、セリフを使うところでは、むしろ早口で激昂に近い口調 のことも多く、セリフの内容よりも口調で語っているという感すらあった。 それでは、セリフを抑えた分だけ動きが雄弁なのかというと、必ずしもそうでも 無かった。むしろ、舞台に立ちつくしてセリフを朗読するかのような場面も少くない。 特に前半は、俳優の立ち位置や立つ向きを通して、登場人物の関係、設定を 物語っていく感もあった。 その俳優の立ち位置によって物語るのを助ける舞台美術が、奧に行くにつれて幅が 狭まることにより奥行感を強調している左右の壁と、その奧にある出入口だ。 これにより、立ち位置として奥行方向と広く使った表現を可能にしていただけでない。 奧から出てきて舞台最前まで歩き進んみ、再びそこから奧に歩き去る、その歩みに よっても登場人物の心理の表現を可能にしていた。 セリフも動きもミニマルに抑制されているのだが、この作品では、避けているという よりも、使った際の効果を有効に引き出すためという感じだ。抑制されているだけに、 冒頭の公爵が Emilia を見初める場面などでの、微かな手先の動きも、感情の機微の 表現に生きている。さらに激昂するような場面では、その振れ幅も大きく感じられる。 特に顔を真っ赤にして演じる Marinelli 役の Ingo Huelsmann の演技は見所だろう。 奧に行くに間が狭まる左右の壁と奧の出入り口のみと舞台美術もミニマルなのだが、 単にそれだけではない。中盤くらいから左右の壁の区画を扉のように使いそこからも 出入りしたが、特に前半は奧の出入口のみを出入りに使っていた。それだけに、 最後に Emilia の父 Odoardo が公爵を殺すべく探し回る場面で、左右の壁の区画を 全て開け、ライティングも上方からの直接照明から左右からの間接照明に切替え られると、今までの日常的な空間とは違う不穏で異質な空間に放りこまれたかの ような大きな転換が感じられて、とても良かった。 音楽も決まったテーマを奏でる violin の音が通して使われるというミニマルさ。 その音の大小によって緊迫感や間合いを表現するといった使い方も良かった。 衣装も18世紀のものではなく現代の服を使っていたが、現代に置き換えたというより、 今のシンプルな服をそのまま使ったという感じだ。 このように全体にミニマルに抑制されているにもかかわらず、観た後の印象は淡々と していたというよりも、強く感情的なものが残るという、そんな舞台作品だった。 sources: Deutsches Theater Berlin, http://www.deutsches-theater.berlin.net/ 彩の国さいたま芸術劇場, http://www.saf.or.jp/ . 2006/03/19 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html