Trisha Brown Dance Company 彩の国さいたま芸術劇場 2006/03/25 15:00-17:00 1970年代にニューヨーク (New York, NY) から出てきた postmodern dance の dancer/choreographer Trisha Brown の率いるカンパニーの公演を見てきた。 内容は、1970年代末のパフォーマンスを捉えた映画と、1980年代の作品1つと、 21世紀に入ってからの作品2つだった。とても良かったという程ではなかったが、 勉強になった所もあったし、普通に楽しめた公演だった。 _Accumulation with Talking plus Watermotor_ - a film of Jonathan Demme, 1979. - Choreography & Performance: Trisha Brown. NYのスタジオで、壁際に座る数人の観客 (おそらくカンパニーのダンサー) に 囲まれて Brown 自身が踊る様子を捉えた映画だ。淡々とテキストを朗読しながら 体の動きが展開していく様子を、途中からスタジオに入ってくる観客の様子 なども交えて捉えていく。スタジオで起こったこと、場が少しずつでき上がって いく様子を映像化するという点で、Talking Heads, _Stop Making Sense_ (1984) や New Order, _Perfect Kiss_ (1985) と共通する感もあり、もともと、このような パフォーマンス記録などを通して作り出した映像演出法だったのかもしれない、 とも感じた。ただ、場ができ上がっていく様子の映像化といっても、続けて観た 生でのパフォーマンスを比べると映画の印象が薄くなるのも否めない。 _Set And Reset_ - Choreography: Trisha Brown. Set & Costumes: Robert Rauschenberg. Music: Laurie Anderson. - premier: 1983. - Dancers: Neal Beasley, Sandra Grinberg, Leah Morrison, Brandi L. Norton, Stacy Matthew Spence, Todd Stone, Katrina Thompson Warren. Anderson による音楽のシンセサイザーやリンドラムの音や、Rauschenberg の 映像を投影するライトボックスを使った美術のセンスが、いかにも1980年代前半 っぽくて、時代を感じた作品だった。 日常の動きを元に展開するダンスは、緊張と弛緩というか、力が抜けた柔らかい 動きも多く、余裕のある軽い衣装もあって、女性ダンサーの方が綺麗に見える ダンスだった。幾何的なフォーメーション取りなどもあって、これで舞台美術等 をミニマルにしたら2000年前後の Rosas のよう、とも思った。Rosas の _Drumming_ (1998) や _Rain_ (2001) は NY postmodern dance の影響が顕著に あると言われていたわけだが、今回の _Set And Reset_ を観て、その言葉を実感 することができた所が、収穫だった。(映画の _Accumulation with Talking plus Watermotor_ でテキストを朗読したがら踊る Brown にも、de Keersmaeker が一人歌って踊った Rosas, _Once_ (2002) が重なって見えた。) _Present Tense_ - Choreography: Trisha Brown. Set & Costumes: Elizabeth Murray. Music: from John Cage, _Sonatas & Interludes for Prepared Piano_ (1946-48) (Sonata 3, Sonata 7, Second Interlude, Sonata 11, Sonata 12, Sonata 13). - Dancers: Neal Beasley, Sandra Grinberg, Brandi L. Norton, Hyun Jin Jung, Stacy Matthew Spence, Todd Stone, Katrina Thompson Warren. _Groove And Countermove_ - Choreography: Trisha Brown. Set & Costumes: Terry Winters. Music: Dave Douglas, _Charms Of The Night Sky_ (Dave Douglas (trumpet), Greg Cohen (double bass), Guy Klucevsek (accordeon), Merk Feldman (violon), Susie Ibarra (percussion), Greg Tardy (saxophone, clarinet)) - Dancers: Neal Beasley, Sandra Grinberg, Hyun Jin Jung, Leah Morrison, Brandi L. Norton, Cori Olinghouse, Stacy Matthew Spence, Todd Stone, Katrina Thompson Warren. 21世紀に入ってからの近作2作も、舞台美術等がよりミニマルになったものの、 1980年代とあまり変わってないように感じた。 _Present Tense_ は膝立て気味に組んだ座りの多用や手の動き、それに音楽にも 東洋趣味を感じる所があった。こちらはあまり印象に残らなかった。 NY down town シーンで1990年代以降頭角を現した jazz/improv の Dave Douglas を音楽に起用した _Groove And Countermove_ は、緩い動きと舞台を横切るような 速い動きなど緩急のコントラストもあり、それなりに楽しめた。音楽が jazz だった だけに、音楽が生演奏であったらもっと緩急も魅力的にみえたのではないかと思った。 あと、緩い動きや衣装のせいもあるとは思うが、特に女性ダンサーの体形がバレエ的 に絞られたように見えなかったことも、興味深かった。こういう所も、この表現が バレエとは違う所から来ているのだと実感させられた。 『Trisha Brown Dance Company ポスター+映像展』 彩の国さいたま芸術劇場情報プラザ 2005/12/06-2006/03/26 また公演に併せて、劇場内にある情報プラザでポスターと記録映像の展覧会を 開催していた。映像は過去の記録映像をカラー1つと白黒2つのブラウン管モニタで 流していた。大画面でゆっくり観られれば興味深かったかもしれないですが、 画面が小さくモニタの前で立ち見を強いるようなセッティングだったのは、残念。 sources: Trisha Brown Dance Company, http://www.trishabrowncompany.org/ 彩の国さいたま芸術劇場, http://www.saf.or.jp/ Trisha Brown Dance Company 公演 @ 彩の国さいたま芸術劇場, http://www.saf.or.jp/performance/geijyutu/05_41.html 『Trisha Brown Dance Company ポスター+映像展』 @ 彩の国さいたま芸術劇場, http://www.saf.or.jp/performance/geijyutu/05_46.html 2006/03/26 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html