Jan Pusch, _Match: Projections On The Move Part II_ 世田谷パブリックシアター 2006/04/08 19:30-20:40 - Premier: 2004. - Choreography, Direction, Text, Videoconcept and Video Direction: Jan Pusch. Video (Camera, Editing, Animation): Timo Schierhorn. Video Assistance: Ulf Groote. Music and Sound Design: Beat Halberschmidt. Stage Design: Geelke Gaychen. Costume Design: Ullinca Schroeder. Dramaturgy, Text and Concept-Cooperation: Bettina Schroeder. Dancers: Melanie Lane, Henrik Kaalund. Jan Pusch はドイツのザクセン州ライプチヒ (Leipzig, Sachsen) 出身で 現在はハンブルグ (Humburg, Germany) を拠点に活動する演出家・振付家だ。 現在、ビデオ・プロジェクションとダンス・シアターを組み合わせた連作 _Projections On The Move_ という三部作を制作中ということで、今回公演した _Match_ はその一作目にあたる。一作目の _Into the Blue_ (2001) は 3つのソロを組み合わせた作品だったというが、この二作目は男女のデュオだ。 三作目は未発表だ。 角がほぼ中央になるよう直交する2枚の壁が舞台後方に置かれており、上手側が 白いスクリーン、下手側が剥き出しの合板となっていた。両側とも壁は途中で 切替えで変化が付けられ、上手側は少し向きが内側となった合板の壁に、 下手側は少し向きが上向きとなった合板の壁になっていた。また、合板の壁には ボルダリングで使うような小さな突起がいくつか設けられていた。上手下手2面 ずつと床と、最低でも5台のプロジェクタを使い、映像が投影された。 コーナーの二面の壁と床の三面とせずに、壁の途中で切替えで変化を付けることで、 ミニマルながら空間に複雑さが増し、そこにビデオを投影することにより、 映像の立体感がぐっと増していたと思う。ビデオ・プロジェクションだけ見ても、 空間に対してコンシャスなマルチスクリーンという印象を受けた。 ダンサーの上にビデオを投影してそれに絡ませる舞台作品では、背景にビデオを 大写しするような場合、被さった映像の中にダンサーが埋没して逆にのっぺりと 感じることもあった。しかし、この舞台の構造の場合、観客の視線と映像の 投影方向が斜交するうえ、5枚の映像の切替えで投影されない壁面が残っている 場合もあり、映像の中にダンサーが埋没していると感じることはほとんど無かった。 ダンサーの動きに合わせたプロジェクタの切替えが巧いとも感じた。 男女の恋愛の駆け引きを作品の主題に関して言えば、"I love you" ではなく 言い方に工夫しろと言われてのピロートークの言葉がポピュラー音楽の 歌詞だとツッコミを入れられていくビデオなど、皮肉が効いていて好きだ。 また、2人相手に対する尋問を直接2人に向かい合わせるのではなく2組のビデオに 対する尋問の組み合わせとする所なども、二者の関係がビデオが挟まることにより 異化されるような面白さもあった。しかし、残念ながら、男女の駆引きを主題に 選んだ必然性が、観ている間はほとんど理解できなかったのも確かだ。 TVワイドショー的な演出などは、むしろ不要とすら感じた。 もっとも、終わった後のアフタートークで、シリーズ一作目がソロであったこと、 二者間の対等な関係を築くための駆引きとして普遍的なものとして恋愛を選んだ、 のような話を聞いて、腑に落ちた所はあったけれども。 ただ、映像の中の男性と男性ダンサーとの格闘や、床に顔面を投影した上での ダンスで顔が歪んでいく様子など、単純に動きとビデオだけで面白いものも多く あったので、もっと抽象的な動きとビデオの絡みだけでも、充分に観せられたので はないかもと感じた。あと、プロジェクションする壁に設けた突起を使い ボルダリングのような動きも使っていたのだが、それとビデオの絡みで面白いと 感じた所が無かったのも、少々残念だった。 sources: Jan Pusch, http://www.janpusch.de/ 世田谷パブリックシアター, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ Jan Pusch, _Match_ @ 世田谷パブリックシアター公演情報, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/05-2-4-60.html 2006/04/09 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html