西野 達 『天上のシェリー』 メゾンエルメス 8階フォーラム 2006/06/02-2006/08/31 (6/21, 7/5, 7/19, 8/16休), 11:00-19:00. 銀座の晴海通り沿いにあるファッションブランド Hermes のビル「メゾン・エルメス」 の屋上に、両手に旗を掲げ持つ騎馬像 (実は花火師の像ようだ) がある。現在、 その像を覆い隠すように、水色のビニールシートで防水された仮設の小屋が設け られている。この小屋というか、その中のインスタレーションが、西野 達 (西野 達郎 から改名) の作品だ。 ブティックを抜けエレベータを上がり非常階段を抜け仮組みの足場を登り、 その小屋の中に入ると、十代の少女の部屋とおぼしき空間が広がっている。 それも、サラリーマンの住む郊外の一軒家の2階にある子供部屋とでもいう感じの 内装と家具だ。そして、少女の部屋にしては大きなベッドが騎馬像の台座と なっており、騎馬像は少女趣味に合わせるように若干キッチュに彩られている。 また、騎馬像を収めるため、部屋の天井も高くなっている。 ブティックや非常階段、仮設の足場を抜けると子供部屋というのも意外だったし、 スケール感の違う大きな騎馬像がそも中に収められていることにより、子供部屋の 中の空間が歪んでいるようで、奇妙な感覚を受ける。それがこの作品の面白さの 一点だろう。 しかし、十代の少女の子供部屋の作りは記号的だ。壁やカーテンの色使いや いかにも設定を説明するかのようにテーブルの上に置かれた少女向けの雑誌が、 そういう設定を物語る程度だ。洋服タンスの中は空だし、本棚もすかすかだ。 もっとディティールに拘り、記号で説明するようなものではない生々しさを感じ させてくれる程度に作りこんで欲しかったようにも思った。それだけであれば、 コンセプト倒れに感じたかもしれない。 しかし、細部を作り込む代わりに、この部屋の中には、この部屋の持ち主に役付け られた女性スタッフいるのだ。彼女は他の展覧会の案内スタッフと違い、十代の 少女の普段着というような服装で、部屋の机に向かって座っている。一人で観に 行ったうえ、他に客もいなかったこともあり、いきなり見知らぬその女性の プライベートルームに一人間違って踏み込んでしまったかのような、なんとも いえないバツの悪さを感じてしまった。この、なんともいえない居心地の悪さも、 この作品の面白さかもしれない。同行者や他にも客がいたらそうでもなかったかも しれないし、女性の観客だとまた受ける感じは違うかもしれないが。 西野は、横濱トリエンナーレ2005において『ホテルヴィラ會芳亭』という作品を 作っている (残念ながら体験はできなかったが)。山下町公園にある会芳亭という 東屋を取り囲むように箱を作り、そこをホテルの部屋にするという作品だった。 このような、屋外の建築物や構造物を取り込むように、ホテルの部屋や子供部屋 を作り、パブリックとプライベートが入れ替わったようなシュールな空間を作るのが、 この作家の特徴だろうか。 sources: メゾンエルメス 8階フォーラム, 中央区銀座5-4-1 (銀座), tel.03-3569-3642. ホテルヴィラ會芳亭, http://www.kaihoutei.com/ 2006/06/03 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html