Robert Lepage _The Andersen Project: A Modernn Fairy-Tale_ 世田谷パブリックシアター 2006/06/24, 14:00-16:00 - Written, Directed and Performed by Robert Lupage. Image produced by Jacques Collin, Veronique Couturier, David Leclerc. - premier: 2005. カナダ・ケベック州モントリオール (Montreal, Quebec, Canada) を拠点に活動 する演出家 Robert Lupage による、自身が演じる一人芝居だ。 Lepage の演出した舞台を観るのは、_The Far Side Of The Moon_ (『月の向こう側』 世田谷パブリックシアター, 2002) に続いて2度目。_The Far Side Of The Moon_ では、最低限ながらトリッキーで効果的な映像・照明使いにとても想像力をかき立て られたので、今回もそれを期待していた。今回の作品も映像を多用していたが、 残念ながら、_The Far Side Of The Moon_ とは使い方がかなり異っていた。 今回の舞台は、とてもテレビ・映画的に感じられた。舞台の背景に白いスクリーンを 張ってそこに場面を説明する映像を上映しつつ、その前で演じていることが多かった だけでない。映像を使わないときでも、舞台に設けられた枠の中で演じている ことがほとんどだったからだ。オープニングにタイトルロール的な演出もあり、 映画やテレビのような感じをわざと演出していた所もあるとは思う。しかし、 _The Far Side Of The Moon_ が気に入っていただけに、ベタに映像的ではない、 舞台表現ならではのトリッキーさが欲しかったように思う。 演出上の工夫で気に入ったのは、(キッチンウェアの) バットを立てたように なったスクリーンを使い、その縁にあたる部分にパフォーマが立って演じること により、足元から映像に溶け込んでいるように見せていたこと。見立てを使った トリッキーな場面転換は無かったけれども、早変り的な役の切替えを見せるときも あった。 しかし、今回の舞台は、演出より、脚本というかセリフが楽しめたように思う。 英語とフランス語で演じられていたこともあり充分に理解できなか所もあったし、 もっとセリフ依存度の低い舞台の方が好みではあるのだが。 この舞台の物語は、19世紀デンマークの作家アンデルセン (Hans Christian Andersen) の童話に基づく子供向けオペラの国際制作プロジェクトのためにカナダ出身の ポピュラー音楽の作詞家がパリ・オペラ座に招かれた際のドタバタ話だ。 ロマンチックなアーティスト像を描くというより、国際制作プロジェクトを 取り巻くちょっとうまくいかない所を抱えた人々 (といっても、一人芝居なので 作詞家と劇場ディレクターくらいだが) を諷刺を込めて描くことを通して、 ユーモラスに舞台作品の制作をとりまく制度や取りあげられるアンデルセンの 作品を批評するようなストーリーだ。Malcolm Bradbury の小説 _Cuts_ (1987) や David Lodge の一連の小説を連想させられた。そういう意味では、ありがちな ストーリーとも言えるが、それなりに笑える所も多く、楽しめたように思う。 sources: Ex Machina / Robert Lepage, http://www.exmachina.qc.ca/ 世田谷パブリックシアター, http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/ 2006/06/25 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html