大竹 伸朗 『全景: Retrospective 1955-2006』 東京都現代美術館 2006/10/14-12/24 (月休), 10:00-18:00 3フロアを使った大規模な回顧展だ。おおまかに、最初の3Fは宇和島に拠点を定める前の作品、 続く1Fは宇和島に拠点にしてからの作品で「日本景」より前の作品、最後のBFは「日本景」 以降の作品、と区分されて展示されている。 最初の3Fは、試行錯誤を観るという感じで作品として凄いという感は無いが、『EZMD』 (1987) の原画の中にあった立体的なコラージュは、宇和島を拠点にしてからの作品に繋がるところも 感じた。 しかし、一番印象に残ったのは、やはり、1Fの一連の作品だ。木造廃船を素材に作った立体作品 とも平面作品 (コラージュ) ともつかない作品の廃材ならではの鈍く暗く茶けた色合いと風化 したテクスチャや、『網膜』シリーズのラップを貼ったようなツルっとしたテクスチャとテープ 貼りみたいな部分のコントラストが、これらの作品の魅力だ。船の廃材と『網膜』シリーズの 特徴を併せ持った『網膜造船所』という作品もあり、興味深かった。 BFは、1Fで展示されている作品のようなテクスチャから離れて、具体的な風景や意匠、 「ワビサビとはほど遠い、かっこ悪く「絶句景」としか言い様のない、リアルな日本の姿」 (観賞ガイト より) を扱った作品が中心だ。1990年代後半は「絶句景」な作品をそれなりに 普通に楽しんでいたような気もするが、社会における格差が前景化した2000年以降では、 その手の「絶句景」を支える社会階層というのを意識せざるを得ないし、作品から受ける印象 がかなり変ったと思った。特に、作品から、今のリアルというより、ノスタルジックな印象を 受けたのが、自分にとって意外だった。そういう雰囲気が作品にあるのは、大竹 がこの手の 作品を作り出した1990年代には、既に失われつつある風景だったのではないかと。こういう 判り易い「かっこ悪さ」は高度成長期のもので、今やロードサイドの大規模ショッピング センターや大規模パチンコ店の進出による淘汰が進んでいるのではないかと、思ったりもした。 sources: 大竹 伸朗 『全景: Retrospective 1955-2006』, http://shinroohtake.jp/ 東京都現代美術館, http://www.mot-art-museum.jp/ 2006/12/12 (2006/12/10) 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html