Companie Les Passager 六本木ヒルズアリーナ 2006/12/16,17, 18:30- Compagnie Les Passagers は、公共スペースや公園、歴史的なモニュメントや工場跡地などに 垂直に立った舞台 "vertical stage" を設置し、時にライヴ・ペインティングをしながら、 エアリアル (aerial, 空中芸) の要素の強い演劇やダンスを上演するフランス (France) の カンパニーだ。演目 としては、オリジナルものはもちろん、 William Shakespeare の _The Tempest_ (premier 2002) やギリシャ神話の Orpheus & Eurydice に基づく Recif (premier 1998) のような古典的な作品のリメイクもあるようだ。 そんな彼らが、六本木ヒルズの『Artelligent Christmas』という歳末イベントの一環として 二晩のパフォーマンスをした。土日二日間のパフォーマンスを併せて一つの作品だと土曜の晩に アナウンスされた。しかし、ライヴ・ペインティングは土曜の続きを日曜に描いていが、 それ以外は土曜、日曜とも同じ内容だった。 全体の印象は、衣裳や小道具、キメのポーズ等が生み出す雰囲気が、意外とエンターテインメント していたということ。もちろん、商業施設でのクリスマス企画演目、ということもあるかも しれない。オープニングのプレゼント包みと一緒に女性パフォーマーが降りてくる所がいかにも クリスマスっぽく、これで、ライヴ・ペインティングで描く絵がクリスマス・モチーフだったら 嫌だなぁ、と思ったりもした。しかし、結局、クリスマスっぽかったのはその程度。ライヴ・ ペインティングで描いたのも、ポップな Wassily Kandinsky という感じの絵だった。 ロープにぶら下がってパフォーマンス、ということで、全体としては、動きが空中遊泳っぽく ふわふわ緩やかだ。ポーズをビシっと決めづらいこともあり、水平方向の回転技を除くと、 特にダンス的、アクロバット的な動きは若干緩慢な印象を受けるときもあった。 そんな中で最も印象に残ったのは、裾にフープを付けたスカートを履いた女性パフォーマー2人が "vertical stage" を軽やかに走り飛び回るシーン。可愛らしいくダイナミックというだけ でなく、最初に観たときは、この上下方向の速い動きをどう実現しているのか不思議だった。 最初は、ロープをウィンチで巻き上げたりリリースしたりしているのだろうかと思った。 しかし、ロープの逆側に男性パフォーマーが繋がっていて、女性が上に動くときは男性が ぶら下がり降りて、女性が下に動くときは男性が足場をより登ることにより、バランスを 取りながら速い上下動を実現していることに気付いた。(これは、このシーンでではなく、 ティッシュも使ったシーンでの速い上下動の際に "vertical stage" に写ったシルエットで 気付いたのだが。) 物足りなかった点は、全体の構成。明確なストーリーが無いこと自体は構わないのだが、全体を 纏めあげるようなテーマが感じられなかった。5分程度のロープにぶら下がってのエアリアルの 演技と、インタリュード的なライヴ・ペインティングを繋ぎ合わせただけ、という感じなのだ。 エアリアルの技はそれなりに綺麗で見応えあるのだが、それだけという感じで印象が薄くなりがち。 このような構成では30分がちょうど良いくらいで、1時間観るとさすがに少々ダレるようにも 思った。そういう点では、Shakespeare ネタやギリシャ神話ネタを拝借して全体の流れを 作ってしまうのは悪く無さそう。やはり _The Tempest_ や _Recif_ のような演目を観た かったと、つくづく思った。 sources: Compagnie Les Passager, http://www.compagnielespassagers.com/ 六本木ヒルズ, http://www.roppongihills.com/ Compagnie Les Passager in 『六本木ヒルズ World Street Perfomance 2006 写真集』, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/photoalbums/Roppongi2006/index.html#lespassagers 2006/12/18 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html